善徳女王 59話#2 極楽浄土の仏
善徳(ソンドク)女王の没後 金春秋(キム・チュンチュ)が即位すれば…
うろたえる夏宗(ハジョン)に貴族を代表してスウルブ公とチュジン公が…
『我々も似たような立場です』
『春秋(チュンチュ)公の即位で ユシン公 ソヒョン公 ヨンチュン公
この3人が勢力を握る』
『ええ 彼らが実権を握ることになります』
『また春秋(チュンチュ)公は 智證(チジュン)王からの
三韓一統の大業を受け継ぐ』
『つまり戦は続き 王建はより強化される
その一方で 我々貴族の勢力は衰えるでしょう』
『どうすれば?』
悩み始める一同に ヨムジョンが…
『問題は どうやって毗曇(ピダム)公を確実につなぎとめるかです』
『こうなった以上 他に手はない』
『そのとおりです これからは我々も命懸けでやるしかない』
『兵部(ピョンブ)に帰属した私兵に対し
時が来たら集結できるよう 連絡網を構築します』
『我々も 準備をしておきましょう』
『新しく集めた傭兵はどうです?』
『ご心配なく 極秘に事を進めております』
そこへ ヨムジョンの部下が知らせに飛び込んでくる
『毗曇(ピダム)公が 司量部(サリャンブ)の武将10人を集め
極秘に文書を 10人の地方官に渡せと!』
『何だと?』
※司量部(サリャンブ):王室のすべての部署を監察する部署
『内容は?』
『“近日中 徐羅伐(ソラボル)に顔を出せ” とだけ』
『徐羅伐(ソラボル)に?』
『はい』
※徐羅伐(ソラボル):新羅(シルラ)の首都 現在の慶州(キョンジュ)
『分かった 渡して来い 彼らがいつ頃来るか調べろ』
『はい!』
『もしや毗曇(ピダム)は何か企んでいるのでは?』
『とにかく我々は計画通りに行動を
美生(ミセン)公も準備中の件を進めてください』
『ええ 分かりました』
毗曇(ピダム)のもとへ 再びサンタクが…
『3人の武将は地方へ向かいました 7人はヨムジョン公の商団に』
『ヨムジョンの手下が7人も?3人の名は?』
『ハンスにチョンタク カンソです』
『今後はその3人だけを動かす』
『はい 上大等(サンデドゥン)! ところで実は…』
『何だ』
『ヨムジョン公が 鉱山の労働者を募集しています』
『鉱山?』
『ですが 剣術や武芸の腕前を尋ねていました』
『それで?』
『労働者の募集とは思えません』
ハッとする毗曇(ピダム)
『労働者がどこへ移動するか調べろ!!!』
『承知しました!』
武芸道場にキム・ユシンが現れ 一同が礼を尽くして迎える
『チュジン公 スウルブ公 虎才(ホジェ)公の私兵を移動させる
各私兵を混合編制し戦線に配置して訓練させろ』
『はい 上将軍(サンジャングン)!』
※上将軍(サンジャングン):大将軍(テジャングン)の下の武官
そこへ 高島(コド)と谷使欣(コクサフン)が駆け込んでくる
『何か動きでも?』
『ヨムジョンが鉱山の労働者の募集を』
『大変な数です すでに千人以上 集まりました』
『千人も?本当に鉱山の労働者か?』
『行き先は金井(クムジョン)山です』
『分かった 見張りを続けろ』
『はい!』
募集で集まった労働者たちは…
『賃金は銀10両だって?』
『鉱山で3か月働いて銀10両とはすごい!』
『何に使う?』
『やはり畑仕事の元手に!』
そこへ迎えが来て 移動が始まった
見張っていた大風(テプン)たちが そのまま尾行する
すると 大風(テプン)たちの前に黒装束の集団が!!!
ようやく集団を追い払い 倒した賊の懐を調べると…
皆が“司量(サリャン)”の刻印がされた札を持っている
知らせを受けた高島(コド)が ユシンと春秋(チュンチュ)に報告する
『刺客?』
『労働者たちではなく大風(テプン)たちに攻撃を』
『そのせいで行列を見失った?』
『はい』
『顔は見たのか?』
『司量部(サリャンブ)だとしか…
ヨムジョンの手の者か 毗曇(ピダム)公の部下か…』
『私の部下だ』
毗曇(ピダム)が現れる
『この件は 陛下が私に一任されている』
『だが傍観はできん』
『しかし 今の私はあまりいい気分ではない 知っておるだろう
私は気分を害すると 自分を抑えられなくなる だから私に任せろ
決定的な時が来れば 兵部(ピョンブ)に頼む』
『よろしい』
代わりに答えたのは春秋(チュンチュ)
春秋(チュンチュ)を睨みつける毗曇(ピダム)
『決定的な時が早く来てほしいものだ 私は辛抱強くない』
『はい… 春秋(チュンチュ)公』
善徳(ソンドク)女王は 月夜(ウォルヤ)が指揮する訓練場に来ていた
『矢が300歩も飛びましたね』
『まだ技術が足りないためか すべての矢が命中してはいません』
『しかし 見事な技術です』
『はい陛下 この距離で命中できれば 戦闘力が大幅に上がります』
同行している閼川(アルチョン)も大いに感心する
『蹶張弩(クォルチャンノ)より有用です 伽耶の秘伝書は素晴らしい』
『恐縮です』
※伽耶:6世紀半ばに滅亡 朝鮮半島南部にあった国
『月夜(ウォルヤ)将軍の実験を 全面的に支援します
あらゆる武器を開発なさい』
『承知しました 陛下に忠誠を誓った以上
大伽耶の王室の倉庫を 春秋(チュンチュ)公にも…』
『まだ早い 春秋(チュンチュ)は急いで事を進めようとする
でも 三韓一統は体力戦だ 分かりますね?』
『はい 準備に万全を期します!』
『そなたの決断に感謝します』
『とんでもございません』
続いて 農民たちと会う善徳(ソンドク)女王
『しばらくは武器の生産を優先します 農機具は既存の物を使うように』
『戦時中ですので 承知しております』
『豆は植えたか?』
『はい やはり豆は土の向上に役立ちます』
『よかった 休閑地を減らせるな』
『陛下 ご恩に感謝いたします』
『感謝いたします!』
『陛下 ご長寿を祈願いたします』
『陛下の名声が高まっております』
『そうか』
日が暮れて 遅くに宮殿に戻った善徳(ソンドク)女王
常にそのそばにいて見守る閼川(アルチョン)
『民の安心感が伝わってきました さすがは陛下です』
『閼川(アルチョン)公 私が手掛けたことを すべて知るのはそなただけだ
そなたなら たやすく口外はしない
もしも… 私に何かあれば そなたの判断で知らせるべき人に伝えてほしい』
『陛下 何をおっしゃるのですか “何か”とは?』
『いいえ ただ人の運命は 分からないものだから』
『陛下 何を焦っておられます』
『ユシン公と春秋(チュンチュ)を呼んで』
『もうお休みください』
『平気です 彼らを呼んで』
サンタクが 再び毗曇(ピダム)のもとへ…
『連絡が?』
『来ました ご出発を!』
キム・ユシンと金春秋(キム・チュンチュ)は 善徳(ソンドク)女王のもとへ…
それぞれに書物が渡される
『これは?』
『三韓一統を本格的に進めるために 整理したものです
今は百済(ペクチェ)が優勢ですが
お2人は目先のことだけにとらわれぬように』
※百済(ペクチェ):三国時代に朝鮮半島南西部にあった国
『それで 兵部(ピョンブ)に諜報 武器開発 密偵運用の組織を新設します』
『賛成です 国別に兵の訓練や密偵の運用方法を
変えるべきだと思っていました 後日報告を』
『そして春秋(チュンチュ) 三国の情勢は変化している
隋で育ち 知識豊富なそなたは 外交に専念しなさい』
『はい 陛下』
『三韓一統は 10年かかるか100年かかるか分からぬ体力戦
策略と兵力の戦いではない
その体力とは 民から得られるものだ』
『はい 陛下』
『ユシン公も』
『はい 陛下』
闇夜の中を サンタクの先導で歩き続けた毗曇(ピダム)
『ここです』
『確かに鉱山だ』
『ええ そのようですね』
『入るぞ』
『はい』
鉱山の奥深く入って行くと かがり火の灯りが見え始め
貴族たちの監視のもと軍事訓練が行われていた…!
『鉱山の労働者が なぜ軍事訓練を?!!!』
ミシルによって そのすべてを統制されてきた貴族たち
よりどころのないミシルの一族
ただ毗曇(ピダム)の存在だけが希望のすべてだった
自分たちを政敵とする金春秋(キム・チュンチュ)
その未来への不安が 彼らの中にはあった
(私が彼らをここまで育ててしまったのか?)
毗曇(ピダム)は キム・ユシンのもとへ…
『夜更けにどうした』
『時が来た』
『では!』
『明日の晩 兵部(ピョンブ)の兵を借りたい 千名ほど必要だ』
『千名?陛下の許可は?』
『……報告は後で』
『だが兵部(ピョンブ)の兵だ』
『解決後にお伝えする 私に一任されたことだ』
『……分かった』
兵部(ピョンブ)を出た毗曇(ピダム)は サンタクと3人の武将に…
『明晩 ヨムジョンの商団と鉱山を襲撃する 集合は亥の刻』
『分かりました』
※亥の刻:午後9時~11時
(陛下 いよいよ明日です ご意志に従い私の手で解決します
私を信じてください… 信じてください…)
ちょうどその頃
いつになく朗らかな夏宗(ハジョン)
貴族たちやヨムジョンも上機嫌だ
『ご心配なく 美生(ミセン)公なら安心です あぁ!これは叔父上』
『首尾は?』
宝宗(ポジョン)を伴い帰ってきた美生(ミセン)の様子を窺う一同
『……私の得意分野ですよ アーッハハハ』
『そのとおり こういう役目で叔父上の右に出る者はいない』
『明日には上書が届きます』
翌朝
便殿会議において 緊急に届けられた上書が公開される
『どんな上書ですか?』
チュジン公から毗曇(ピダム)の手に
毗曇(ピダム)から善徳(ソンドク)女王の手に 上書が渡された
『屈阿火(クラファ)県の 絲浦(サポ)の地方官から届きました』
『箱だけを積んだ船が屈阿火(クラファ)県に?』
『はい その箱と文が 徐羅伐(ソラボル)に向かっております』
『チヌン大帝が黄龍(ファンニョン)寺を建立された時と同じですな』
『まったくです』
『これは慶事です』
『縁起が良いことで!』
『大変な幸運でございます』
必要以上に持ち上げる貴族たち
船を見に行こうという高島(コド)たちは 今回のことがまるで理解できない
ちょうど通りかかった物知りの竹方(チュクパン)を呼び止める
『兄貴 見物に?』
『うん行こう』
『でも どういう経緯です?』
『何が?あぁ…つまりチヌン大帝が宮殿を建てようとしたところ
地面から黄色い龍が現れた』
『黄色い龍?』
『それで 宮殿ではなく寺を建てろという意味に解釈し
建立されたのが黄龍(ファンニョン)寺だ』
『それが名前の由来か』
『待て待て』
納得して行こうとする高島(コド)たちを引き止める竹方(チュクパン)
『当時 新羅(シルラ)は仏教が公認されてわずか30年
寺を建てるにも 仏像を作るにも 技術や見本 人手や鉄が足りない』
※新羅(シルラ):朝鮮半島南東部から発展し 後に三国を統一
もう行きたいのに 竹方(チュクパン)は自分の話に酔いしれている
しかし この話は年配なら誰でも知っている話のようで
町中が竹方(チュクパン)のような語りたがりが…
『屈阿火(クラファ)県に船が到着したそうだ 中は無人で箱と文があり
それは西天竺国の阿育王が800年前に送ったものだった』
※西天竺国:インド
※阿育王:アショカ王
『800年前だと?!!!』
『もっと驚くことは 箱の中には銅と黄金が山ほどあった
そして仏像の見本図が入っていたそうだ』
『阿育王は仏像を作らせたが どうしてもうまくいかず
それで海に流したとか』
王室の 万明(マンミョン)夫人からこの話を聞いているのは月夜(ウォルヤ)
『船に乗せて流したのですか』
『縁がある国に届けば 見本通りに丈六如来像が造られると思ったのね』
※丈六如来像:1丈6尺の釈迦如来仏像
『そして今 当時と同じく箱だけが港に?』
『そのようだ しかし…』
『どうしたのです 喜ばしいことですよ』
浮かない顔のキム・ソヒョン
『チヌン大帝の治世以来の吉事です』
『確かに 民は喜びに沸き 陛下の名声は高まっている』
『着いたようです』
無人の船に乗せられていたという箱と文が 宮殿に届けられた
さっそく便殿会議が召集された
『陛下 今がチヌン大帝時代のような治世だという意味では?』
『神国に大きな栄光が訪れる兆候でしょう ハッハッハ…』
美辞麗句を並べ立てる貴族たち
いよいよ届けられた文が 上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)の手に…
文を開き 読んだ毗曇(ピダム)の表情が みるみる険しくなった
目配せし合う貴族たち
毗曇(ピダム)の異変に気付いた春秋(チュンチュ)が 文を取り上げる
『どうしたの 読みなさい』
『……』
『読みなさい!』
毗曇(ピダム)から文を取り上げた春秋(チュンチュ)もまた
声を震わせながら 消え入るような声で読み始めた
『“西国呼世尊 神国…呼帝尊”』
※西国呼世尊:西方極楽浄土での仏の名
※神国呼帝尊:新羅(シルラ)での皇帝の呼び名
驚愕する善徳(ソンドク)女王
仕掛けた貴族たちでさえ恐れおののいている
ヨンチュン公が その意味を言葉にする
『極楽浄土の仏の名を持つ者が 神国の王になると?!!!』
『極楽浄土の仏?!!!』
ユシンの頭に浮かんだ文字は…
(曇(ダム)か…?毗曇(ピダム)が…即位する?)
うろたえる夏宗(ハジョン)に貴族を代表してスウルブ公とチュジン公が…
『我々も似たような立場です』
『春秋(チュンチュ)公の即位で ユシン公 ソヒョン公 ヨンチュン公
この3人が勢力を握る』
『ええ 彼らが実権を握ることになります』
『また春秋(チュンチュ)公は 智證(チジュン)王からの
三韓一統の大業を受け継ぐ』
『つまり戦は続き 王建はより強化される
その一方で 我々貴族の勢力は衰えるでしょう』
『どうすれば?』
悩み始める一同に ヨムジョンが…
『問題は どうやって毗曇(ピダム)公を確実につなぎとめるかです』
『こうなった以上 他に手はない』
『そのとおりです これからは我々も命懸けでやるしかない』
『兵部(ピョンブ)に帰属した私兵に対し
時が来たら集結できるよう 連絡網を構築します』
『我々も 準備をしておきましょう』
『新しく集めた傭兵はどうです?』
『ご心配なく 極秘に事を進めております』
そこへ ヨムジョンの部下が知らせに飛び込んでくる
『毗曇(ピダム)公が 司量部(サリャンブ)の武将10人を集め
極秘に文書を 10人の地方官に渡せと!』
『何だと?』
※司量部(サリャンブ):王室のすべての部署を監察する部署
『内容は?』
『“近日中 徐羅伐(ソラボル)に顔を出せ” とだけ』
『徐羅伐(ソラボル)に?』
『はい』
※徐羅伐(ソラボル):新羅(シルラ)の首都 現在の慶州(キョンジュ)
『分かった 渡して来い 彼らがいつ頃来るか調べろ』
『はい!』
『もしや毗曇(ピダム)は何か企んでいるのでは?』
『とにかく我々は計画通りに行動を
美生(ミセン)公も準備中の件を進めてください』
『ええ 分かりました』
毗曇(ピダム)のもとへ 再びサンタクが…
『3人の武将は地方へ向かいました 7人はヨムジョン公の商団に』
『ヨムジョンの手下が7人も?3人の名は?』
『ハンスにチョンタク カンソです』
『今後はその3人だけを動かす』
『はい 上大等(サンデドゥン)! ところで実は…』
『何だ』
『ヨムジョン公が 鉱山の労働者を募集しています』
『鉱山?』
『ですが 剣術や武芸の腕前を尋ねていました』
『それで?』
『労働者の募集とは思えません』
ハッとする毗曇(ピダム)
『労働者がどこへ移動するか調べろ!!!』
『承知しました!』
武芸道場にキム・ユシンが現れ 一同が礼を尽くして迎える
『チュジン公 スウルブ公 虎才(ホジェ)公の私兵を移動させる
各私兵を混合編制し戦線に配置して訓練させろ』
『はい 上将軍(サンジャングン)!』
※上将軍(サンジャングン):大将軍(テジャングン)の下の武官
そこへ 高島(コド)と谷使欣(コクサフン)が駆け込んでくる
『何か動きでも?』
『ヨムジョンが鉱山の労働者の募集を』
『大変な数です すでに千人以上 集まりました』
『千人も?本当に鉱山の労働者か?』
『行き先は金井(クムジョン)山です』
『分かった 見張りを続けろ』
『はい!』
募集で集まった労働者たちは…
『賃金は銀10両だって?』
『鉱山で3か月働いて銀10両とはすごい!』
『何に使う?』
『やはり畑仕事の元手に!』
そこへ迎えが来て 移動が始まった
見張っていた大風(テプン)たちが そのまま尾行する
すると 大風(テプン)たちの前に黒装束の集団が!!!
ようやく集団を追い払い 倒した賊の懐を調べると…
皆が“司量(サリャン)”の刻印がされた札を持っている
知らせを受けた高島(コド)が ユシンと春秋(チュンチュ)に報告する
『刺客?』
『労働者たちではなく大風(テプン)たちに攻撃を』
『そのせいで行列を見失った?』
『はい』
『顔は見たのか?』
『司量部(サリャンブ)だとしか…
ヨムジョンの手の者か 毗曇(ピダム)公の部下か…』
『私の部下だ』
毗曇(ピダム)が現れる
『この件は 陛下が私に一任されている』
『だが傍観はできん』
『しかし 今の私はあまりいい気分ではない 知っておるだろう
私は気分を害すると 自分を抑えられなくなる だから私に任せろ
決定的な時が来れば 兵部(ピョンブ)に頼む』
『よろしい』
代わりに答えたのは春秋(チュンチュ)
春秋(チュンチュ)を睨みつける毗曇(ピダム)
『決定的な時が早く来てほしいものだ 私は辛抱強くない』
『はい… 春秋(チュンチュ)公』
善徳(ソンドク)女王は 月夜(ウォルヤ)が指揮する訓練場に来ていた
『矢が300歩も飛びましたね』
『まだ技術が足りないためか すべての矢が命中してはいません』
『しかし 見事な技術です』
『はい陛下 この距離で命中できれば 戦闘力が大幅に上がります』
同行している閼川(アルチョン)も大いに感心する
『蹶張弩(クォルチャンノ)より有用です 伽耶の秘伝書は素晴らしい』
『恐縮です』
※伽耶:6世紀半ばに滅亡 朝鮮半島南部にあった国
『月夜(ウォルヤ)将軍の実験を 全面的に支援します
あらゆる武器を開発なさい』
『承知しました 陛下に忠誠を誓った以上
大伽耶の王室の倉庫を 春秋(チュンチュ)公にも…』
『まだ早い 春秋(チュンチュ)は急いで事を進めようとする
でも 三韓一統は体力戦だ 分かりますね?』
『はい 準備に万全を期します!』
『そなたの決断に感謝します』
『とんでもございません』
続いて 農民たちと会う善徳(ソンドク)女王
『しばらくは武器の生産を優先します 農機具は既存の物を使うように』
『戦時中ですので 承知しております』
『豆は植えたか?』
『はい やはり豆は土の向上に役立ちます』
『よかった 休閑地を減らせるな』
『陛下 ご恩に感謝いたします』
『感謝いたします!』
『陛下 ご長寿を祈願いたします』
『陛下の名声が高まっております』
『そうか』
日が暮れて 遅くに宮殿に戻った善徳(ソンドク)女王
常にそのそばにいて見守る閼川(アルチョン)
『民の安心感が伝わってきました さすがは陛下です』
『閼川(アルチョン)公 私が手掛けたことを すべて知るのはそなただけだ
そなたなら たやすく口外はしない
もしも… 私に何かあれば そなたの判断で知らせるべき人に伝えてほしい』
『陛下 何をおっしゃるのですか “何か”とは?』
『いいえ ただ人の運命は 分からないものだから』
『陛下 何を焦っておられます』
『ユシン公と春秋(チュンチュ)を呼んで』
『もうお休みください』
『平気です 彼らを呼んで』
サンタクが 再び毗曇(ピダム)のもとへ…
『連絡が?』
『来ました ご出発を!』
キム・ユシンと金春秋(キム・チュンチュ)は 善徳(ソンドク)女王のもとへ…
それぞれに書物が渡される
『これは?』
『三韓一統を本格的に進めるために 整理したものです
今は百済(ペクチェ)が優勢ですが
お2人は目先のことだけにとらわれぬように』
※百済(ペクチェ):三国時代に朝鮮半島南西部にあった国
『それで 兵部(ピョンブ)に諜報 武器開発 密偵運用の組織を新設します』
『賛成です 国別に兵の訓練や密偵の運用方法を
変えるべきだと思っていました 後日報告を』
『そして春秋(チュンチュ) 三国の情勢は変化している
隋で育ち 知識豊富なそなたは 外交に専念しなさい』
『はい 陛下』
『三韓一統は 10年かかるか100年かかるか分からぬ体力戦
策略と兵力の戦いではない
その体力とは 民から得られるものだ』
『はい 陛下』
『ユシン公も』
『はい 陛下』
闇夜の中を サンタクの先導で歩き続けた毗曇(ピダム)
『ここです』
『確かに鉱山だ』
『ええ そのようですね』
『入るぞ』
『はい』
鉱山の奥深く入って行くと かがり火の灯りが見え始め
貴族たちの監視のもと軍事訓練が行われていた…!
『鉱山の労働者が なぜ軍事訓練を?!!!』
ミシルによって そのすべてを統制されてきた貴族たち
よりどころのないミシルの一族
ただ毗曇(ピダム)の存在だけが希望のすべてだった
自分たちを政敵とする金春秋(キム・チュンチュ)
その未来への不安が 彼らの中にはあった
(私が彼らをここまで育ててしまったのか?)
毗曇(ピダム)は キム・ユシンのもとへ…
『夜更けにどうした』
『時が来た』
『では!』
『明日の晩 兵部(ピョンブ)の兵を借りたい 千名ほど必要だ』
『千名?陛下の許可は?』
『……報告は後で』
『だが兵部(ピョンブ)の兵だ』
『解決後にお伝えする 私に一任されたことだ』
『……分かった』
兵部(ピョンブ)を出た毗曇(ピダム)は サンタクと3人の武将に…
『明晩 ヨムジョンの商団と鉱山を襲撃する 集合は亥の刻』
『分かりました』
※亥の刻:午後9時~11時
(陛下 いよいよ明日です ご意志に従い私の手で解決します
私を信じてください… 信じてください…)
ちょうどその頃
いつになく朗らかな夏宗(ハジョン)
貴族たちやヨムジョンも上機嫌だ
『ご心配なく 美生(ミセン)公なら安心です あぁ!これは叔父上』
『首尾は?』
宝宗(ポジョン)を伴い帰ってきた美生(ミセン)の様子を窺う一同
『……私の得意分野ですよ アーッハハハ』
『そのとおり こういう役目で叔父上の右に出る者はいない』
『明日には上書が届きます』
翌朝
便殿会議において 緊急に届けられた上書が公開される
『どんな上書ですか?』
チュジン公から毗曇(ピダム)の手に
毗曇(ピダム)から善徳(ソンドク)女王の手に 上書が渡された
『屈阿火(クラファ)県の 絲浦(サポ)の地方官から届きました』
『箱だけを積んだ船が屈阿火(クラファ)県に?』
『はい その箱と文が 徐羅伐(ソラボル)に向かっております』
『チヌン大帝が黄龍(ファンニョン)寺を建立された時と同じですな』
『まったくです』
『これは慶事です』
『縁起が良いことで!』
『大変な幸運でございます』
必要以上に持ち上げる貴族たち
船を見に行こうという高島(コド)たちは 今回のことがまるで理解できない
ちょうど通りかかった物知りの竹方(チュクパン)を呼び止める
『兄貴 見物に?』
『うん行こう』
『でも どういう経緯です?』
『何が?あぁ…つまりチヌン大帝が宮殿を建てようとしたところ
地面から黄色い龍が現れた』
『黄色い龍?』
『それで 宮殿ではなく寺を建てろという意味に解釈し
建立されたのが黄龍(ファンニョン)寺だ』
『それが名前の由来か』
『待て待て』
納得して行こうとする高島(コド)たちを引き止める竹方(チュクパン)
『当時 新羅(シルラ)は仏教が公認されてわずか30年
寺を建てるにも 仏像を作るにも 技術や見本 人手や鉄が足りない』
※新羅(シルラ):朝鮮半島南東部から発展し 後に三国を統一
もう行きたいのに 竹方(チュクパン)は自分の話に酔いしれている
しかし この話は年配なら誰でも知っている話のようで
町中が竹方(チュクパン)のような語りたがりが…
『屈阿火(クラファ)県に船が到着したそうだ 中は無人で箱と文があり
それは西天竺国の阿育王が800年前に送ったものだった』
※西天竺国:インド
※阿育王:アショカ王
『800年前だと?!!!』
『もっと驚くことは 箱の中には銅と黄金が山ほどあった
そして仏像の見本図が入っていたそうだ』
『阿育王は仏像を作らせたが どうしてもうまくいかず
それで海に流したとか』
王室の 万明(マンミョン)夫人からこの話を聞いているのは月夜(ウォルヤ)
『船に乗せて流したのですか』
『縁がある国に届けば 見本通りに丈六如来像が造られると思ったのね』
※丈六如来像:1丈6尺の釈迦如来仏像
『そして今 当時と同じく箱だけが港に?』
『そのようだ しかし…』
『どうしたのです 喜ばしいことですよ』
浮かない顔のキム・ソヒョン
『チヌン大帝の治世以来の吉事です』
『確かに 民は喜びに沸き 陛下の名声は高まっている』
『着いたようです』
無人の船に乗せられていたという箱と文が 宮殿に届けられた
さっそく便殿会議が召集された
『陛下 今がチヌン大帝時代のような治世だという意味では?』
『神国に大きな栄光が訪れる兆候でしょう ハッハッハ…』
美辞麗句を並べ立てる貴族たち
いよいよ届けられた文が 上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)の手に…
文を開き 読んだ毗曇(ピダム)の表情が みるみる険しくなった
目配せし合う貴族たち
毗曇(ピダム)の異変に気付いた春秋(チュンチュ)が 文を取り上げる
『どうしたの 読みなさい』
『……』
『読みなさい!』
毗曇(ピダム)から文を取り上げた春秋(チュンチュ)もまた
声を震わせながら 消え入るような声で読み始めた
『“西国呼世尊 神国…呼帝尊”』
※西国呼世尊:西方極楽浄土での仏の名
※神国呼帝尊:新羅(シルラ)での皇帝の呼び名
驚愕する善徳(ソンドク)女王
仕掛けた貴族たちでさえ恐れおののいている
ヨンチュン公が その意味を言葉にする
『極楽浄土の仏の名を持つ者が 神国の王になると?!!!』
『極楽浄土の仏?!!!』
ユシンの頭に浮かんだ文字は…
(曇(ダム)か…?毗曇(ピダム)が…即位する?)
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