善徳女王 39話#1 和白(ファベク)会議
『それでも貴族が売らずに 値下がりしなかったら?』
『そうなるでしょうか 売らずにいられますか?
そうするには あまりにも高値で買ったのでは?』
徳曼(トンマン)の答えに 動揺を隠せないミシル
『貴族が穀物を買い占めたのは…』
『ええ 自作農の土地を所有するためでしょう』
『だから売りません!』
『それは貴族が団結し 1つになればの話です!
貴族個人では 売らずにいられません セジュがおっしゃったのです
それが人の心だと』
※セジュ:王の印を管理する役職
『皆には売るなと言うでしょうが 本当は誰よりも先に自分が売りたいのでは?』
ミシルが言い返せないなら ここで言い返すことのできる者はいない
睨み合うミシルと徳曼(トンマン)
しかし 徳曼(トンマン)の顔には笑みが浮かんでいる
会談を終えた徳曼(トンマン)を 毗曇(ピダム)が待っていた
『兵糧米は?』
『少し出しました 兵糧米の噂で値が下がり始めました 市場は大混乱です
売るべきかどうかで 皆 大騒ぎしています』
『現在の値は?』
『15両です 明日にはさらに下がります』
『10両になったら買え』
『はい』
『一気にまとめて買うのだ』
『はい もちろんです』
ミシルの執務室では 夏宗(ハジョン)が美生(ミセン)相手に叫んでいる
『通常の4倍も高く買ったんですよ!!!』
『それで一体 どうなったというのです』
『とにかく今からでも売らないと!まったく頭に来る!』
『ちょっと… いやはや どうなっているのです?説明してください』
夏宗(ハジョン)に続き 世宗(セジョン)も不機嫌に出て行く
それを追いかけ美生(ミセン)も退席し ミシルとソルォンだけになる
『ソルォン公も行ってください もう貴族を抑えられません 損失を最小限に』
動揺は 花郎(ファラン)たちの間にみるみる広がっていく
『兵糧米の放出は本当だ』
『まさかそんなことが…』
『誰にも知られずに兵糧米を?』
『石品郎(ソクプムラン)と朴義郎(パグィラン)は素早く売って損失を抑えた』
『我々も早く家に知らせて対応せねば』
『行こう!』
市場では 我先にと穀物を売ろうと人が群がる
『ミョンソン公の使いだ』
『チョンギョン公のを買ってくれ』
『必要ない!』
『余っているんだよ!』
『そう言わないで』
『要らないよ!』
この様子を じっと見ているヨムジョン
『今いくらだ?』
『13両です』
『10両になったら買うんだ』
『分かりました』
夏宗(ハジョン)は 使用人を罵倒し一刻も早く穀物を市場へと怒鳴っている
それを苦々しく見ている世宗(セジョン)
『何をやっている 早く行け! 早くするんだ!!!急いでいけ!』
そこへ 虎才(ホジェ) 石品(ソクプム) 朴義(パグィ)が…
『石品郎(ソクプムラン)から聞き駆け付けました このまま放置を?』
『それはない』
『許しがたいことです 貴族の力を示さねば!』
『父上も上大等(サンデドゥン)に協力するとのことです』
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
そこへ 美生(ミセン)も…
『まったく頭の痛いことだ 王女様を和白(ファベク)会議に召喚すべきでは?』
『はい!王女に政務から手を引かせましょう』
『大等(テドゥン)たちに和白(ファベク)会議の通知を』
※和白(ファベク):会議:新羅(シルラ)の貴族会議
※大等(テドゥン):新羅(シルラ)の中央貴族の核心層
美生(ミセン)の提案に夏宗(ハジョン)と世宗(セジョン)が合意する形で
和白(ファベク)会議が開かれることとなった
ミシルと徳曼(トンマン)は 再度会談している
『今後は?穀物が値上がりしたら 毎回兵糧米を売るのですか
それは無理があります 確かに衝撃は受けました
王女様の無謀な行動を目の当りにすれば 当然です
この件が及ぼす影響を 考えていないのですか?』
『毎回 兵糧米を売るわけにはいきません
しかし無謀な王女がいると知れば 貴族はむやみに買い占めないはずです』
徳曼(トンマン)の答えに ミシルはあからさまに 呆れた顔をする
『その心意気は認めましょう
しかしこの国には 嫌でも貴族がいるのです
租税を取り立て国を守る地方の役人も貴族です
貴族に背を向け どのように政務を執るのか気になりますし
心配でもありますが うまく乗り切ることを願います』
『ところでセジュ ずっと疑問に思っていることがあるのです
セジュは賢い方です 鋭い洞察力もあります
行動力や指導力にも優れている それなのになぜチヌン大帝以降
新羅(シルラ)は… 発展しないのです?』
※新羅(シルラ):朝鮮半島南東部から発展し 後に三国を統一
『優れた指導者がいれば当然 発展するべきでしょう
しかし どの記録を調べても発展が見られない
チヌン大帝以降は何ひとつです なぜでしょう 理由をご存じで?』
憮然とした表情でミシルが立ち去り 入れ替わりにキム・ユシンが入ってくる
『なぜ怒らせるのですか』
『はい?』
『セジュのことです』
『お怒りでした?本当に知りたくて聞いたのです』
『はい?』
『優れた指導者が国を治めれば 発展するものでしょう
なのに なぜ発展しないのか気になります
理由が分かれば 同じ失敗はしません』
『兵糧米は 全部回収できるのですか?』
すっかり日が暮れた市場で ヨムジョンが穀物を買い付けている
そこへ 金春秋(キム・チュンチュ)が…
『これは春秋(チュンチュ)公』
『すべて回収できるのか?』
『こうなったら誰も止められません 貴族たちがすごい勢いで売っています』
『そうか』
『王女様は 商売をご存じのようです
20両で売って10両で買ったので 儲かりました ウワッハッハ…』
『王室の財政も危ないようだな』
『はい?』
『貴族を抑えるのに兵糧米を使うとは』
『さすが春秋(チュンチュ)公 私もそう思います
王室は赤ん坊の集団のようです えーんお母ちゃん アッハッハ…』
『「三韓地勢」のことだが…』
※三韓地勢:三国の地理を記録した地図
そこまで話したところで 春秋(チュンチュ)は毗曇(ピダム)の存在に気づく
『「三韓地勢」が何でしょうか?』
『何だ?「三韓地勢」? なぜお前が関心を?』
春秋(チュンチュ)は怯えてヨムジョンの背に隠れ
ヨムジョンも毗曇(ピダム)の殺気に震え上がる
『私は何も言っていない そろそろ中で酒令具(チュリョング)遊びでも…ご苦労』
『春秋(チュンチュ)公 私も…!』
※酒令具(チュリョング):酒を飲む際 罰を与えるためのサイコロ
春秋(チュンチュ)を追いかけようとして ヨムジョンだけが捕まる
ヨムジョンを見捨てて春秋(チュンチュ)は逃げ出す
『お前の命は俺が握っている 師匠が書いた本 そして組織 口に気をつけろ』
『分かったよ』
『兵糧米は回収できたな』
和白(ファベク)会議で 今回の結果を報告する徳曼(トンマン)
『兵糧米は回収しました』
『回収したかどうかの問題ではありません』
『そうです 勝手に兵糧米を出したことが問題です』
『そのとおりです 手順を無視されたのが問題です
王女様 理由を説明していただけますか』
美生(ミセン)を筆頭に 夏宗(ハジョン)と世宗(セジョン)が追及する
それに対し 堂々と答える徳曼(トンマン)
『それは ここにいるあなた方が犯人だったからです』
『犯人だと?何という言い方!』
『そうです いくら王女様とはいえ大等(テドゥン)に向かって…』
『撤回してください!』
『撤回を!』
『そのとおりです!』
『ご発言の撤回を!』
大騒ぎになった会議の場で 徳曼(トンマン)は1つの書信を読み上げる
『世宗(セジョン)公1800石 夏宗(ハジョン)公980石 美生(ミセン)公1280石
ソルォン公320石 スプム公850石 ヨンチュン公330石 インドン公…』
『何のつもりですか!!!』
『インドン公180石 ここにいる大等(テドゥン)たちが買い占めた穀物の量です
穀物の高騰がもとで 殺人まで起こりました
数か月かけて織った布全部でも 穀物を買えなかったためです
これでも 犯人ではないと?』
『自分の財産で買ったんです!それが罪ですか?』
『私は 高騰のせいで苦しむ民のために兵糧米を出しました 罪ですか?』
『兵糧米ですよ!和白(ファベク)会議で決めるのが神国の伝統です』
※神国:新羅(シルラ)の別称
『民が飢えれば食糧を与えるのが王室の伝統です
そして大等(テドゥン)の伝統でもある そのための和白(ファベク)会議では?』
『そうは言ってもこの問題は…』
『民が飢えているのに見過ごせません!』
どこまでも問題にしようとする世宗(セジョン)
キム・ソヒョンがただ1人 徳曼(トンマン)に味方した
『そのとおりです 民心が離れれば反乱も起こりかねない』
『兵糧米を持ち出した兵部(ピョンブ)の役人がよく言えますね でしょう?』
『そうです!これは手順も原則もすべて無視した行動です
王女様が政務から手を引くよう決議すべきだ!』
『そうだ!』
『そのとおり!』
『何の決議をするのだ!』
紛糾の中 徳曼(トンマン)が…
『私を 政務から手を引かせる方法があります』
この発言に 場内は静まり返る
『買い占め禁止の律令を定めてください
それならば 私は政務から退きます』
『……できません 買い占め禁止など!』
『自分の財産を自由に使えないのですか?』
今度はヨンチュン公が…
『欲のせいで苦しむ民を考えてのことだ』
『ヨンチュン公も買ったくせに言い逃れか?』
『口の利き方に気をつけなさい!』
『は?そういうことか ヨンチュン公は買った量が少ないし
ソヒョン公は買ってない 最初から知っていたのでは?』
『貴様ーーーっ!』
『ヨンチュン公』
『何を?貴様だと?ヨンチュン公この野郎!!!』
つかみ合いになるヨンチュン公と夏宗(ハジョン)を両派が止めようとして
かえって場内は乱闘の場となり 議論をする状況ではなくなった
キム・ソヒョンから報告を受ける マヤ王妃と万明(マンミョン)夫人
『では 王女様への制裁は決議されず会議が終わったと?』
『和白(ファベク)会議に加勢しに来た地方貴族も帰りました
結局 夏宗(ハジョン)公が退席しておしまいです』
『そうですか こういう時はありがたい存在ですね』
『いや違う』
一緒に聞いていた真平(チンピョン)王が…
『浅はかに見えて 目の前の利益に敏感だ
買い占め禁止が議論されるのを 懸念してのことであろう
会議を終わらせるために わざと騒いだのだ』
『意図していたかどうか… 本能的な行動でしょう 動物的な勘です』
やはりミシルの執務室では 興奮冷めやらぬ夏宗(ハジョン)が…
『あぁ…頭に来る おかしくなりそうだ!ちょっと母上!』
『損失は忘れなさい 利益を得る時もあれば損をする時もあります』
『尋常な額じゃないんです!!!』
『もうすぐ収穫です』
『収穫の時期になれば 租税を徴収します』
『租税を徴収すれば どこかで問題が起こる 王女との談判はその時でいい』
美生(ミセン)とソルォンの言葉で 少しだけ落ち着きを取り戻す夏宗(ハジョン)
さらに美生(ミセン)が…
『今回の損失では 私も腹が立っています
だが今 王女と対立するのは得策でない』
『今日はやけにお2人の息が合ってますね
ああ ソルォン公もあまり買っていませんでしたね 知っていたとか?』
『夏宗(ハジョン)公 おやめください』
落ち着いたところで世宗(セジョン)が…
『損失や談判などは次の機会があるが 王女をどうにかしなければ』
『陛下や天明(チョンミョン)王女とは大違いです』
笑顔のままのミシルが口を開いた
『今までの王室のやり方と違い 浅はかですが少し戸惑いました』
夜遅くになっても 書庫にこもっている徳曼(トンマン)
そこへ毗曇(ピダム)とキム・ユシンが入ってくる
『今日は大変だったのに まだここに?』
『来ましたか』
『このような日は早くお休みください もう夜中です』
『人のことは言えませんよ』
『はい?』
不思議がる毗曇(ピダム)を相手に 楽しそうに話し始める徳曼(トンマン)
『私が郎徒(ナンド)だった頃です
休む間も与えないし 自分も休まない』
『そんな昔のことを…』
※郎徒(ナンド):花郎(ファラン)である主に仕える構成員
自分の知らない話に不機嫌な表情の毗曇(ピダム)
『ところで 今回出た利益ですが大金です 何に使いますか?』
『相談しようと思っていました やりたいことがあるのです 意見をお願いします』
『お話を』
『はい これを見ると… 利益はこのくらいです』
こういう話になると 毗曇(ピダム)の出る幕ではなかった
同席していながら 毗曇(ピダム)は蚊帳の外だった
『武器を作る鉄で農具を作ろうと思います どうでしょう』
『名案です』
その頃ミシルは 徳曼(トンマン)に聞かれたことを思い返す
「それなのになぜ チヌン大帝以降
新羅(シルラ)は発展しないのです?」
そこへ ソルォンが…
『セジュ 春秋(チュンチュ)公ですが』
『はい』
『婚姻の話を進めようと思います』
『お願いします…』
『どうしました?』
『体調がすぐれません』
『ではお休みにならないと』
『すぐよくなります 今日はこれで』
『はい お休みください』
立ち上がったものの ソルォンは元気のないミシルが心配だった
『セジュ』
『はい』
『うらやむのは おやめください
人の身分をうらやむのは 私だけで十分です』
『……ご心配なく』
結局 徳曼(トンマン)は書庫で夜を明かす
ミシルが書庫に来ると 徳曼(トンマン)は資料の山にもたれて眠っている
そばに行き 起こそうとしてためらい 離れた場所に座る
するとそこへ 毗曇(ピダム)に小突かれながら春秋(チュンチュ)が…
ミシルの存在に気づき 恐縮する2人
春秋(チュンチュ)が恐る恐る尋ねる
『セジュは何のご用で?』
『読みたい本があって来ました』
その話し声で 徳曼(トンマン)が目を覚ます
『セジュはいつこちらに?』
『お疲れのようなので起こしませんでした』
恐縮しながら 徳曼(トンマン)は春秋(チュンチュ)にも聞く
『本を読みに?』
『はい』
徳曼(トンマン)に短く返事をし 春秋(チュンチュ)はミシルに向き直る
『宝良(ポリャン)様を介して絵を下さり ありがとうございました』
『風流を解する方だと 美生(ミセン)に聞いたので』
気まずい雰囲気に 毗曇(ピダム)は突然春秋(チュンチュ)の横に立つ
『王女様 春秋(チュンチュ)公はこんな態度ですが 武術の訓練も熱心ですし
買い占めの件でも手助けしてくれました』
『そうか』
何を言う!という表情で毗曇(ピダム)を見る春秋(チュンチュ)
ミシルの姻戚になろうかという今 徳曼(トンマン)に協力したなど
ましてやミシルの前では言ってほしくない話だった
『て…手助けなんてしてないだろ』
『貴族が買い占める理由を教えてくれて 王室の財政まで心配なさいました』
『そうか そんなことも知っているのか』
『いいえ 毗曇(ピダム)が適当なことを…』
『春秋(チュンチュ)公…』
逃げるようにして書庫から出て行く春秋(チュンチュ)
入れ違いに昭火(ソファ)が入ってくる
『王女様 陛下がお呼びです』
『分かった』
徳曼(トンマン)と昭火(ソファ)が出て行き ミシルと毗曇(ピダム)だけになる
『王女の命令で 春秋(チュンチュ)公の教育を?』
『いいえ 学んでいるのは私の方です
王室について誰も教えてくれなかったので 生まれてから今までずっと』
毗曇(ピダム)の言葉の真意は…
1人残ったミシルは 苦悩の表情で本を閉じる
徳曼(トンマン)を呼びつけた真平(チンピョン)王は…
『本当にやるつもりなのか?』
『はい 陛下』
『これで自作農を増やせると考えるのだな』
『はい』
『やりなさい』
『お許しいただけるのですか?』
『そうだ お前が考えるほど簡単ではないだろう だがやってみなさい』
『陛下 ありがとうございます』
『本当に 今回の利益をすべて使うつもりなのか?』
『はい そのつもりです すべて使います』
『分かった そうしなさい』
さっそく 鉄器工場を視察する徳曼(トンマン)
左右に閼川(アルチョン)と毗曇(ピダム)
後ろには大風(テプン)と谷使欣(コクサフン)が立っている
閼川(アルチョン)が…
『王女様にご挨拶を!』
『これより当分は 武器ではなく農具を作るように』
『王室の鍛冶職人は農具を作りません 町の鍛冶職人に…』
『いいえ 町の農具は6等級の鉄で作っている』
『では…』
戸惑う鍛冶職人はどうしていいか分からない様子
初めて聞く命令に 閼川(アルチョン)と毗曇(ピダム)でさえ質問したい表情だ
『ここでは2等級以上の強い鉄で作る』
『それは武器用の高価な鉄です』
『今回の利益を すべてつぎ込む 今から 強度の高い鉄で農具の生産を』
『は…はい 王女様』
王室の鍛冶職人が 民のための農具を高価な鉄で作る作業が始まった
『胸が躍ります』
『そうでしょう 私もです』
(ユシン郎(ラン) 何かをつかみ始めました ミシルを越えるための何かを)
安康(アンガン)城
民が武器を手に押し寄せる
怒り狂った民の勢いは止まらず 次々に城内へ乱入していく…!
この報告を受けた王室では…
『何だと?安康(アンガン)城で暴動が?』
『はい 民が城に乱入し太守を人質に取ったそうです』
『世宗(セジョン)公の領地ですね なぜ暴動が?』
『害虫被害で収穫が半減し 粟500石しか収穫できなかったそうです』
『収穫高が減って なぜ太守を人質に取るのです?』
『はい 夏宗(ハジョン)公が例年通りの租税を徴収したからです』
『収穫は半減したのに 租税は例年通り500石でした』
『民の手元に残る分はなかったのですね』
『はい すべてを徴収したそうです』
『害虫や日照りで凶作の年は 普通は朝廷に知らせて租税を減らすのでは?』
『夏宗(ハジョン)がわざと事態を悪化させたのだろう』
真平(チンピョン)王は世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)を呼び
これに徳曼(トンマン)が同席する
『安康(アンガン)城の件は 一体どういうつもりだ』
『陛下 例年通りにしただけです
粟500石を徴収し 250石を国に納めるのでしょう』
『害虫被害が出た地域です 収穫量が半分なのになぜ例年通りの租税を?』
徳曼(トンマン)の質問に 夏宗(ハジョン)が憮然と聞き返す
『では王室に250石を納めなくてもいいですか?』
『王室への租税を減らせというのですか?』
『はい そうすれば安康(アンガン)城の民に 250石を返します
しかし こちらの取り分は渡せません
先日王女様が 商売をなさったおかげで大損害を被りましたので』
この件について キム・ユシンと毗曇(ピダム)が話し合う
『王室が税を減らせば 民は奴婢にならずに済むが 王室の財政が悪化する』
『夏宗(ハジョン)公は取り分が減らないから 一切損をしない』
『それでは王室が無償で穀物を配るのと同じことだ』
『毎年繰り返してきた状況と同じだな』
『王女様は 民を放っておくわけにもいかない』
『どう考えても 貴族たちは打つ手が多すぎる』
上機嫌でミシルに報告する夏宗(ハジョン)
『母上にも見せたかったです
徳曼(トンマン)王女は私の話に反論できなかった ウッハッハ…』
『王女は何の対策もなかったのか?』
『顔から血の気が引いていました』
『他に方法はない 国が税を減らさなければ 民は奴婢になるしかない』
『そうですよ!我々の財産を奪おうとするからだ』
『いつも同じ結果なのに それに気づかない王女をどうしたものでしょう』
『そうなるでしょうか 売らずにいられますか?
そうするには あまりにも高値で買ったのでは?』
徳曼(トンマン)の答えに 動揺を隠せないミシル
『貴族が穀物を買い占めたのは…』
『ええ 自作農の土地を所有するためでしょう』
『だから売りません!』
『それは貴族が団結し 1つになればの話です!
貴族個人では 売らずにいられません セジュがおっしゃったのです
それが人の心だと』
※セジュ:王の印を管理する役職
『皆には売るなと言うでしょうが 本当は誰よりも先に自分が売りたいのでは?』
ミシルが言い返せないなら ここで言い返すことのできる者はいない
睨み合うミシルと徳曼(トンマン)
しかし 徳曼(トンマン)の顔には笑みが浮かんでいる
会談を終えた徳曼(トンマン)を 毗曇(ピダム)が待っていた
『兵糧米は?』
『少し出しました 兵糧米の噂で値が下がり始めました 市場は大混乱です
売るべきかどうかで 皆 大騒ぎしています』
『現在の値は?』
『15両です 明日にはさらに下がります』
『10両になったら買え』
『はい』
『一気にまとめて買うのだ』
『はい もちろんです』
ミシルの執務室では 夏宗(ハジョン)が美生(ミセン)相手に叫んでいる
『通常の4倍も高く買ったんですよ!!!』
『それで一体 どうなったというのです』
『とにかく今からでも売らないと!まったく頭に来る!』
『ちょっと… いやはや どうなっているのです?説明してください』
夏宗(ハジョン)に続き 世宗(セジョン)も不機嫌に出て行く
それを追いかけ美生(ミセン)も退席し ミシルとソルォンだけになる
『ソルォン公も行ってください もう貴族を抑えられません 損失を最小限に』
動揺は 花郎(ファラン)たちの間にみるみる広がっていく
『兵糧米の放出は本当だ』
『まさかそんなことが…』
『誰にも知られずに兵糧米を?』
『石品郎(ソクプムラン)と朴義郎(パグィラン)は素早く売って損失を抑えた』
『我々も早く家に知らせて対応せねば』
『行こう!』
市場では 我先にと穀物を売ろうと人が群がる
『ミョンソン公の使いだ』
『チョンギョン公のを買ってくれ』
『必要ない!』
『余っているんだよ!』
『そう言わないで』
『要らないよ!』
この様子を じっと見ているヨムジョン
『今いくらだ?』
『13両です』
『10両になったら買うんだ』
『分かりました』
夏宗(ハジョン)は 使用人を罵倒し一刻も早く穀物を市場へと怒鳴っている
それを苦々しく見ている世宗(セジョン)
『何をやっている 早く行け! 早くするんだ!!!急いでいけ!』
そこへ 虎才(ホジェ) 石品(ソクプム) 朴義(パグィ)が…
『石品郎(ソクプムラン)から聞き駆け付けました このまま放置を?』
『それはない』
『許しがたいことです 貴族の力を示さねば!』
『父上も上大等(サンデドゥン)に協力するとのことです』
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
そこへ 美生(ミセン)も…
『まったく頭の痛いことだ 王女様を和白(ファベク)会議に召喚すべきでは?』
『はい!王女に政務から手を引かせましょう』
『大等(テドゥン)たちに和白(ファベク)会議の通知を』
※和白(ファベク):会議:新羅(シルラ)の貴族会議
※大等(テドゥン):新羅(シルラ)の中央貴族の核心層
美生(ミセン)の提案に夏宗(ハジョン)と世宗(セジョン)が合意する形で
和白(ファベク)会議が開かれることとなった
ミシルと徳曼(トンマン)は 再度会談している
『今後は?穀物が値上がりしたら 毎回兵糧米を売るのですか
それは無理があります 確かに衝撃は受けました
王女様の無謀な行動を目の当りにすれば 当然です
この件が及ぼす影響を 考えていないのですか?』
『毎回 兵糧米を売るわけにはいきません
しかし無謀な王女がいると知れば 貴族はむやみに買い占めないはずです』
徳曼(トンマン)の答えに ミシルはあからさまに 呆れた顔をする
『その心意気は認めましょう
しかしこの国には 嫌でも貴族がいるのです
租税を取り立て国を守る地方の役人も貴族です
貴族に背を向け どのように政務を執るのか気になりますし
心配でもありますが うまく乗り切ることを願います』
『ところでセジュ ずっと疑問に思っていることがあるのです
セジュは賢い方です 鋭い洞察力もあります
行動力や指導力にも優れている それなのになぜチヌン大帝以降
新羅(シルラ)は… 発展しないのです?』
※新羅(シルラ):朝鮮半島南東部から発展し 後に三国を統一
『優れた指導者がいれば当然 発展するべきでしょう
しかし どの記録を調べても発展が見られない
チヌン大帝以降は何ひとつです なぜでしょう 理由をご存じで?』
憮然とした表情でミシルが立ち去り 入れ替わりにキム・ユシンが入ってくる
『なぜ怒らせるのですか』
『はい?』
『セジュのことです』
『お怒りでした?本当に知りたくて聞いたのです』
『はい?』
『優れた指導者が国を治めれば 発展するものでしょう
なのに なぜ発展しないのか気になります
理由が分かれば 同じ失敗はしません』
『兵糧米は 全部回収できるのですか?』
すっかり日が暮れた市場で ヨムジョンが穀物を買い付けている
そこへ 金春秋(キム・チュンチュ)が…
『これは春秋(チュンチュ)公』
『すべて回収できるのか?』
『こうなったら誰も止められません 貴族たちがすごい勢いで売っています』
『そうか』
『王女様は 商売をご存じのようです
20両で売って10両で買ったので 儲かりました ウワッハッハ…』
『王室の財政も危ないようだな』
『はい?』
『貴族を抑えるのに兵糧米を使うとは』
『さすが春秋(チュンチュ)公 私もそう思います
王室は赤ん坊の集団のようです えーんお母ちゃん アッハッハ…』
『「三韓地勢」のことだが…』
※三韓地勢:三国の地理を記録した地図
そこまで話したところで 春秋(チュンチュ)は毗曇(ピダム)の存在に気づく
『「三韓地勢」が何でしょうか?』
『何だ?「三韓地勢」? なぜお前が関心を?』
春秋(チュンチュ)は怯えてヨムジョンの背に隠れ
ヨムジョンも毗曇(ピダム)の殺気に震え上がる
『私は何も言っていない そろそろ中で酒令具(チュリョング)遊びでも…ご苦労』
『春秋(チュンチュ)公 私も…!』
※酒令具(チュリョング):酒を飲む際 罰を与えるためのサイコロ
春秋(チュンチュ)を追いかけようとして ヨムジョンだけが捕まる
ヨムジョンを見捨てて春秋(チュンチュ)は逃げ出す
『お前の命は俺が握っている 師匠が書いた本 そして組織 口に気をつけろ』
『分かったよ』
『兵糧米は回収できたな』
和白(ファベク)会議で 今回の結果を報告する徳曼(トンマン)
『兵糧米は回収しました』
『回収したかどうかの問題ではありません』
『そうです 勝手に兵糧米を出したことが問題です』
『そのとおりです 手順を無視されたのが問題です
王女様 理由を説明していただけますか』
美生(ミセン)を筆頭に 夏宗(ハジョン)と世宗(セジョン)が追及する
それに対し 堂々と答える徳曼(トンマン)
『それは ここにいるあなた方が犯人だったからです』
『犯人だと?何という言い方!』
『そうです いくら王女様とはいえ大等(テドゥン)に向かって…』
『撤回してください!』
『撤回を!』
『そのとおりです!』
『ご発言の撤回を!』
大騒ぎになった会議の場で 徳曼(トンマン)は1つの書信を読み上げる
『世宗(セジョン)公1800石 夏宗(ハジョン)公980石 美生(ミセン)公1280石
ソルォン公320石 スプム公850石 ヨンチュン公330石 インドン公…』
『何のつもりですか!!!』
『インドン公180石 ここにいる大等(テドゥン)たちが買い占めた穀物の量です
穀物の高騰がもとで 殺人まで起こりました
数か月かけて織った布全部でも 穀物を買えなかったためです
これでも 犯人ではないと?』
『自分の財産で買ったんです!それが罪ですか?』
『私は 高騰のせいで苦しむ民のために兵糧米を出しました 罪ですか?』
『兵糧米ですよ!和白(ファベク)会議で決めるのが神国の伝統です』
※神国:新羅(シルラ)の別称
『民が飢えれば食糧を与えるのが王室の伝統です
そして大等(テドゥン)の伝統でもある そのための和白(ファベク)会議では?』
『そうは言ってもこの問題は…』
『民が飢えているのに見過ごせません!』
どこまでも問題にしようとする世宗(セジョン)
キム・ソヒョンがただ1人 徳曼(トンマン)に味方した
『そのとおりです 民心が離れれば反乱も起こりかねない』
『兵糧米を持ち出した兵部(ピョンブ)の役人がよく言えますね でしょう?』
『そうです!これは手順も原則もすべて無視した行動です
王女様が政務から手を引くよう決議すべきだ!』
『そうだ!』
『そのとおり!』
『何の決議をするのだ!』
紛糾の中 徳曼(トンマン)が…
『私を 政務から手を引かせる方法があります』
この発言に 場内は静まり返る
『買い占め禁止の律令を定めてください
それならば 私は政務から退きます』
『……できません 買い占め禁止など!』
『自分の財産を自由に使えないのですか?』
今度はヨンチュン公が…
『欲のせいで苦しむ民を考えてのことだ』
『ヨンチュン公も買ったくせに言い逃れか?』
『口の利き方に気をつけなさい!』
『は?そういうことか ヨンチュン公は買った量が少ないし
ソヒョン公は買ってない 最初から知っていたのでは?』
『貴様ーーーっ!』
『ヨンチュン公』
『何を?貴様だと?ヨンチュン公この野郎!!!』
つかみ合いになるヨンチュン公と夏宗(ハジョン)を両派が止めようとして
かえって場内は乱闘の場となり 議論をする状況ではなくなった
キム・ソヒョンから報告を受ける マヤ王妃と万明(マンミョン)夫人
『では 王女様への制裁は決議されず会議が終わったと?』
『和白(ファベク)会議に加勢しに来た地方貴族も帰りました
結局 夏宗(ハジョン)公が退席しておしまいです』
『そうですか こういう時はありがたい存在ですね』
『いや違う』
一緒に聞いていた真平(チンピョン)王が…
『浅はかに見えて 目の前の利益に敏感だ
買い占め禁止が議論されるのを 懸念してのことであろう
会議を終わらせるために わざと騒いだのだ』
『意図していたかどうか… 本能的な行動でしょう 動物的な勘です』
やはりミシルの執務室では 興奮冷めやらぬ夏宗(ハジョン)が…
『あぁ…頭に来る おかしくなりそうだ!ちょっと母上!』
『損失は忘れなさい 利益を得る時もあれば損をする時もあります』
『尋常な額じゃないんです!!!』
『もうすぐ収穫です』
『収穫の時期になれば 租税を徴収します』
『租税を徴収すれば どこかで問題が起こる 王女との談判はその時でいい』
美生(ミセン)とソルォンの言葉で 少しだけ落ち着きを取り戻す夏宗(ハジョン)
さらに美生(ミセン)が…
『今回の損失では 私も腹が立っています
だが今 王女と対立するのは得策でない』
『今日はやけにお2人の息が合ってますね
ああ ソルォン公もあまり買っていませんでしたね 知っていたとか?』
『夏宗(ハジョン)公 おやめください』
落ち着いたところで世宗(セジョン)が…
『損失や談判などは次の機会があるが 王女をどうにかしなければ』
『陛下や天明(チョンミョン)王女とは大違いです』
笑顔のままのミシルが口を開いた
『今までの王室のやり方と違い 浅はかですが少し戸惑いました』
夜遅くになっても 書庫にこもっている徳曼(トンマン)
そこへ毗曇(ピダム)とキム・ユシンが入ってくる
『今日は大変だったのに まだここに?』
『来ましたか』
『このような日は早くお休みください もう夜中です』
『人のことは言えませんよ』
『はい?』
不思議がる毗曇(ピダム)を相手に 楽しそうに話し始める徳曼(トンマン)
『私が郎徒(ナンド)だった頃です
休む間も与えないし 自分も休まない』
『そんな昔のことを…』
※郎徒(ナンド):花郎(ファラン)である主に仕える構成員
自分の知らない話に不機嫌な表情の毗曇(ピダム)
『ところで 今回出た利益ですが大金です 何に使いますか?』
『相談しようと思っていました やりたいことがあるのです 意見をお願いします』
『お話を』
『はい これを見ると… 利益はこのくらいです』
こういう話になると 毗曇(ピダム)の出る幕ではなかった
同席していながら 毗曇(ピダム)は蚊帳の外だった
『武器を作る鉄で農具を作ろうと思います どうでしょう』
『名案です』
その頃ミシルは 徳曼(トンマン)に聞かれたことを思い返す
「それなのになぜ チヌン大帝以降
新羅(シルラ)は発展しないのです?」
そこへ ソルォンが…
『セジュ 春秋(チュンチュ)公ですが』
『はい』
『婚姻の話を進めようと思います』
『お願いします…』
『どうしました?』
『体調がすぐれません』
『ではお休みにならないと』
『すぐよくなります 今日はこれで』
『はい お休みください』
立ち上がったものの ソルォンは元気のないミシルが心配だった
『セジュ』
『はい』
『うらやむのは おやめください
人の身分をうらやむのは 私だけで十分です』
『……ご心配なく』
結局 徳曼(トンマン)は書庫で夜を明かす
ミシルが書庫に来ると 徳曼(トンマン)は資料の山にもたれて眠っている
そばに行き 起こそうとしてためらい 離れた場所に座る
するとそこへ 毗曇(ピダム)に小突かれながら春秋(チュンチュ)が…
ミシルの存在に気づき 恐縮する2人
春秋(チュンチュ)が恐る恐る尋ねる
『セジュは何のご用で?』
『読みたい本があって来ました』
その話し声で 徳曼(トンマン)が目を覚ます
『セジュはいつこちらに?』
『お疲れのようなので起こしませんでした』
恐縮しながら 徳曼(トンマン)は春秋(チュンチュ)にも聞く
『本を読みに?』
『はい』
徳曼(トンマン)に短く返事をし 春秋(チュンチュ)はミシルに向き直る
『宝良(ポリャン)様を介して絵を下さり ありがとうございました』
『風流を解する方だと 美生(ミセン)に聞いたので』
気まずい雰囲気に 毗曇(ピダム)は突然春秋(チュンチュ)の横に立つ
『王女様 春秋(チュンチュ)公はこんな態度ですが 武術の訓練も熱心ですし
買い占めの件でも手助けしてくれました』
『そうか』
何を言う!という表情で毗曇(ピダム)を見る春秋(チュンチュ)
ミシルの姻戚になろうかという今 徳曼(トンマン)に協力したなど
ましてやミシルの前では言ってほしくない話だった
『て…手助けなんてしてないだろ』
『貴族が買い占める理由を教えてくれて 王室の財政まで心配なさいました』
『そうか そんなことも知っているのか』
『いいえ 毗曇(ピダム)が適当なことを…』
『春秋(チュンチュ)公…』
逃げるようにして書庫から出て行く春秋(チュンチュ)
入れ違いに昭火(ソファ)が入ってくる
『王女様 陛下がお呼びです』
『分かった』
徳曼(トンマン)と昭火(ソファ)が出て行き ミシルと毗曇(ピダム)だけになる
『王女の命令で 春秋(チュンチュ)公の教育を?』
『いいえ 学んでいるのは私の方です
王室について誰も教えてくれなかったので 生まれてから今までずっと』
毗曇(ピダム)の言葉の真意は…
1人残ったミシルは 苦悩の表情で本を閉じる
徳曼(トンマン)を呼びつけた真平(チンピョン)王は…
『本当にやるつもりなのか?』
『はい 陛下』
『これで自作農を増やせると考えるのだな』
『はい』
『やりなさい』
『お許しいただけるのですか?』
『そうだ お前が考えるほど簡単ではないだろう だがやってみなさい』
『陛下 ありがとうございます』
『本当に 今回の利益をすべて使うつもりなのか?』
『はい そのつもりです すべて使います』
『分かった そうしなさい』
さっそく 鉄器工場を視察する徳曼(トンマン)
左右に閼川(アルチョン)と毗曇(ピダム)
後ろには大風(テプン)と谷使欣(コクサフン)が立っている
閼川(アルチョン)が…
『王女様にご挨拶を!』
『これより当分は 武器ではなく農具を作るように』
『王室の鍛冶職人は農具を作りません 町の鍛冶職人に…』
『いいえ 町の農具は6等級の鉄で作っている』
『では…』
戸惑う鍛冶職人はどうしていいか分からない様子
初めて聞く命令に 閼川(アルチョン)と毗曇(ピダム)でさえ質問したい表情だ
『ここでは2等級以上の強い鉄で作る』
『それは武器用の高価な鉄です』
『今回の利益を すべてつぎ込む 今から 強度の高い鉄で農具の生産を』
『は…はい 王女様』
王室の鍛冶職人が 民のための農具を高価な鉄で作る作業が始まった
『胸が躍ります』
『そうでしょう 私もです』
(ユシン郎(ラン) 何かをつかみ始めました ミシルを越えるための何かを)
安康(アンガン)城
民が武器を手に押し寄せる
怒り狂った民の勢いは止まらず 次々に城内へ乱入していく…!
この報告を受けた王室では…
『何だと?安康(アンガン)城で暴動が?』
『はい 民が城に乱入し太守を人質に取ったそうです』
『世宗(セジョン)公の領地ですね なぜ暴動が?』
『害虫被害で収穫が半減し 粟500石しか収穫できなかったそうです』
『収穫高が減って なぜ太守を人質に取るのです?』
『はい 夏宗(ハジョン)公が例年通りの租税を徴収したからです』
『収穫は半減したのに 租税は例年通り500石でした』
『民の手元に残る分はなかったのですね』
『はい すべてを徴収したそうです』
『害虫や日照りで凶作の年は 普通は朝廷に知らせて租税を減らすのでは?』
『夏宗(ハジョン)がわざと事態を悪化させたのだろう』
真平(チンピョン)王は世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)を呼び
これに徳曼(トンマン)が同席する
『安康(アンガン)城の件は 一体どういうつもりだ』
『陛下 例年通りにしただけです
粟500石を徴収し 250石を国に納めるのでしょう』
『害虫被害が出た地域です 収穫量が半分なのになぜ例年通りの租税を?』
徳曼(トンマン)の質問に 夏宗(ハジョン)が憮然と聞き返す
『では王室に250石を納めなくてもいいですか?』
『王室への租税を減らせというのですか?』
『はい そうすれば安康(アンガン)城の民に 250石を返します
しかし こちらの取り分は渡せません
先日王女様が 商売をなさったおかげで大損害を被りましたので』
この件について キム・ユシンと毗曇(ピダム)が話し合う
『王室が税を減らせば 民は奴婢にならずに済むが 王室の財政が悪化する』
『夏宗(ハジョン)公は取り分が減らないから 一切損をしない』
『それでは王室が無償で穀物を配るのと同じことだ』
『毎年繰り返してきた状況と同じだな』
『王女様は 民を放っておくわけにもいかない』
『どう考えても 貴族たちは打つ手が多すぎる』
上機嫌でミシルに報告する夏宗(ハジョン)
『母上にも見せたかったです
徳曼(トンマン)王女は私の話に反論できなかった ウッハッハ…』
『王女は何の対策もなかったのか?』
『顔から血の気が引いていました』
『他に方法はない 国が税を減らさなければ 民は奴婢になるしかない』
『そうですよ!我々の財産を奪おうとするからだ』
『いつも同じ結果なのに それに気づかない王女をどうしたものでしょう』
コメント
コメントを投稿