善徳女王 42話#1 ミシルの変化
『昨晩 宝良(ポリャン)と婚礼を挙げ初夜を過ごしました』
『春秋(チュンチュ)が皆を分裂させ 新勢力の確立を計画しているなら…』
『もう1つの事態とは… 春秋(チュンチュ)公がミシルをはめたのです』
(春秋(チュンチュ)は幼くない いいえ 春秋(チュンチュ)は既に舞台に立った)
この知らせは 王室にとってもミシル側にとっても 衝撃だった
ソルォンと宝宗(ポジョン)は 石品(ソクプム)から報告を受けて驚いた
『何だと?それで春秋(チュンチュ)公がどうしたと?』
『今 宝良(ポリャン)様と便殿で陛下にお会いしています
すでに… 婚礼を挙げたとか』
『婚礼を?』
父である宝宗(ポジョン)は絶句する
便殿を出た春秋(チュンチュ)は 徳曼(トンマン)に会う
『分かりましたか 私がミシルを利用したのです』
『ええ でも…』
『なぜ簡単にだまされたか?分かっていてもどうしようもなかったのです』
『そなたが彼らの不安と疑念をかき立てた
人は不安な時 動くものだからか?』
『ええ 最初から計画していました
私はミシルのように 兵や花郎(ファラン)を動かしたり
叔母上のように 日食の時期を計算し偽の石碑を作るような
面倒な真似はしません ただ… この舌を動かすだけです』
『……』
※花郎(ファラン):美しく文武両道に秀でた青年の精鋭集団
『整然たるアリの行列が 私のひと言で崩れるのを見ていればいい』
『確かにそうなった だがすべての可能性を想定したのか』
『もちろんです』
『失敗したら?』
『それはあり得ません』
『万が一失敗したら 私が手を差し伸べるからその手をつかめ』
何を言っているのだと バカにしたような春秋(チュンチュ)の表情
『約束できるか』
『ええ いいでしょう 万が一失敗したら』
春秋(チュンチュ)が徳曼(トンマン)と話す間 外で待っている宝良(ポリャン)
そこへ ソルォンと宝宗(ポジョン)が息せき切ってやって来た
『宝良(ポリャン)!』
『お父様』
険しい顔でソルォンが…
『どういうことだ』
『……』
そこへ 春秋(チュンチュ)が出てきて頭を下げる
『義父上 ご挨拶を』
『……』
『若さゆえにこうなってしまいました ご理解いただけますね?』
その様子を さらに後方から世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)父子が見ている
春秋(チュンチュ)たちが立ち去り 両者は睨み合う
『我々が宝良(ポリャン)を連れ去ったと?!我々が婚礼まで挙げてやったと?』
『誤解でした 我々は本当に知らなかったのです
セジュと世宗(セジョン)公の約束は存じていますので
春秋(チュンチュ)公から宝良(ポリャン)を遠ざけようとしました』
『まさか春秋(チュンチュ)公が宝良(ポリャン)を連れ去るとは…』
『信じてください 信頼し合わねば春秋(チュンチュ)公の計略にはまります』
今や必死に懇願するしかないソルォンと宝宗(ポジョン)
世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)は容易には納得しない
『そなたが私なら 信じられるか?』
憤慨したままの世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)は美生(ミセン)のもとへ
『叔父上 一体どうなっているんですか?!!!』
『セジュはどこにいる!!!』
※セジュ:王の印を管理する役職
『落ち着いてください 私も捜しています』
『叔父上なら落ち着いていられます?問題は起こるし母上はいない!』
『宝良(ポリャン)を春秋(チュンチュ)公と婚姻させぬ約束は私も知っています
でも仕方ないでしょう!分別のない春秋(チュンチュ)が早まった真似を…』
『そうではない!ソルォンが手を回したのだ』
『ソルォン公がこんな無茶をしますか!それはないでしょう
ですからそう興奮せず落ち着いてください
私が春秋(チュンチュ)公に会ってきます』
美生(ミセン)が足早に立ち去り 世宗(セジョン)は深いため息をつく
『もはや先がまったく見えぬ状態だ』
『花郎(ファラン)と郎徒(ナンド)に命じてソルォンの屋敷の監視を!』
『私はピルタン郎(ラン)に会わねば』
ミシルの夫であることと 身分の高さだけが優位に立っていられる理由だった
武功と戦術に関しては全面的にミシルの信頼を得ているソルォン父子
その上 王室の縁続きになり身分の高さまで負けてしまったら…
世宗(セジョン)父子にとっては 決して見過ごせない事態だったのだ
石品(ソクプム)たちからミシルの行方を聞き 驚くソルォン
『セジュが遊山に出かけられただと?』
『チルスク様と数人の従者だけをお連れに』
『世宗(セジョン)公と夏宗(ハジョン)兄上があの様子なのに 一大事です』
『今すぐ郎徒(ナンド)を連れてセジュを捜せ!』
『はい!』
※郎徒(ナンド):花郎(ファラン)である主に仕える構成員
『いや待て お前たち3人は徐羅伐(ソラボル)に残り指示を待て』
『はい』
※徐羅伐(ソラボル):新羅の首都 現在の慶州(キョンジュ)
『お前が郎徒(ナンド)を率いて捜索しろ』
『承知しました』
ソルォンは 主要な花郎(ファラン)を手元に置き サンタクに捜索を命じた
そこへ 美生(ミセン)が…
『姉上は見つかりましたか』
『いいえ』
『世宗(セジョン)義兄上と夏宗(ハジョン)は私がなだめましたが…』
『こんな時に なぜ母上は遊山などに?』
答えられない美生(ミセン)
息子の問いにソルォンが…
『セジュは これまでの人生に疑問を抱いておられる
胸騒ぎがします 心配でなりません』
王室でも 春秋(チュンチュ)のことについて話し合われていた
『春秋(チュンチュ)が問題を起こしました』
『一体どうなっているのだ』
王と王妃の疑問に答えるヨンチュン公
『春秋(チュンチュ)公はミシルに利用されたのではなく
逆に利用したのでしょう』
『春秋(チュンチュ)公が?』
『はい ご覧になった通り この婚姻は
上大等(サンデドゥン)とソルォン公を分裂させるよい手です』
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
ヨンチュン公の見解にキム・ソヒョンと万明(マンミョン)夫人が…
『だがミシルがそう簡単にだまされるわけが…』
『こんな時に遊山に出かけたのも妙です』
真平(チンピョン)王もこれに同意する
『ああ 確かに妙だ ミシルらしくない』
徳曼(トンマン)は キム・ユシンと閼川(アルチョン)
そして月夜(ウォルヤ)を交えて話し合う
『春秋(チュンチュ)は得意気ですが…』
『ミシルに春秋(チュンチュ)公の策が見抜けぬとは思えません』
『ええ 自分の勢力の団結を最優先に考えるミシルです』
『しかし こんな時に遊山に出かけるとは』
『何はともあれ連中の分裂は願ってもないことです
我々はこの状況を生かす策を練るだけです
王女様はそんなに不安に思わないでください』
『いいえ それが不安なのです』
『え?』
『ミシルが… ミシルがだまされた
春秋(チュンチュ)はしてはならぬ婚姻を結び…』
『それで上大等(サンデドゥン)とソルォン公が分裂している…』
『なのに何も手を打とうとしないとは それが私を不安にさせます
ミシルに 一体どのような心境の変化が…』
徳曼(トンマン)の執務室を出た閼川(アルチョン)と月夜(ウォルヤ)は
待っていた雪地(ソルチ)と郎徒(ナンド)たちに向かって厳しい態度を見せる
『ミシルが黙って宮殿を出たなら 上大等(サンデドゥン)やソルォン公
美生(ミセン)公も捜しているはず』
『彼らの動きを見張ればいい』
『我々が上大等(サンデドゥン)を監視します』
『頼む 高島(コド)お前は美生(ミセン)公を
谷使欣(コクサフン)と大風(テプン)はソルォン公を すぐに行け!
妙な動きがあればすぐに報告しろ』
『はい!』
直ちに行動を開始する一同だが
高島(コド)が 谷使欣(コクサフン)たちを引き止める
『竹方(チュクパン)兄貴は?』
『婚姻の話を聞いて慌てて出て行ったぞ』
『それからは見てない お前も頑張って監視しろ』
『何だよ 1人で遊びに出かけたのか? よし 美生(ミセン)公の監視だ!』
その頃竹方(チュクパン)は 春秋(チュンチュ)の部屋に呼ばれていた
『大郎頭(テナンドゥ)!よく来た
そなたがいなければ計画を立てられなかった』
『え?』
※大郎頭(テナンドゥ):郎徒(ナンド)の6番目の等級
『竹方(チュクパン)大郎頭(テナンドゥ)にお茶をお出しせぬか!』
『はい』
『そんなことより春秋(チュンチュ)公 婚姻はまずいですよ』
『とにかく まあ座れ』
席につかせるなり 竹方(チュクパン)の手に金を握らせる春秋(チュンチュ)
『私の行動に対する皆の反応を教えてくれ』
『今日は話を聞かせに来たわけじゃ…
徳曼(トンマン)王女様を苦しめないでください』
名残惜しそうにしながらも 金の入った巾着を返そうとする竹方(チュクパン)
『そなたは話をするのが実にうまい
そなたに聞いた話から 今回の策を思いついた』
『そんな… やめてください 私を密偵に仕立てようというのですか』
『こうなったら… 私に仕えてみないか?』
『はい?』
出てきた竹方(チュクパン)は 手にしっかりと巾着を握らされ
茫然自失の表情になっている
『あぁ… また話をしてしまった 本当に不思議なお方だ
話したくないことまで ついぺらぺらと 化かされた気分だ…』
突然の人の気配に 咄嗟に隠れる竹方(チュクパン)
美生(ミセン)公が春秋(チュンチュ)の部屋に入って行く
(美生(ミセン)がなぜここに…)
すると背後から高島(コド)が現れ 驚く竹方(チュクパン)
『何でかな』
『驚かせるな!ここで何してる』
『そっちこそ 皆がミシルセジュを捜してる』
『ミシルセジュを捜してるのか?』
『うん それで連中を監視してる 俺は美生(ミセン)公の担当』
中では…
『春秋(チュンチュ)公 お察ししますよ
若さゆえに先走り 宝良(ポリャン)と… お気持ちは分かります
ですがそれをすぐ行動に移されては 多くの人に迷惑がかかります』
美生(ミセン)を睨む春秋(チュンチュ)
しかし美生(ミセン)は構わず話し続ける
『利害関係が複雑ゆえ詳しくは話せませんが…』
『美生(ミセン)公は 世の中の動きに明るい方です』
『ん?』
『今 何が起きているかもお分かりでしょう』
『え?』
『母の天明(チョンミョン)王女は 大男甫(テナムボ)に殺されました』
美生(ミセン)の顔から血の気が引く
息子である大男甫(テナムボ)の件は終わったと思っていたのだ
『私は大男甫(テナムボ)に情けをかけ生かした』
『チュ…春秋(チュンチュ)公』
『私の恩に美生(ミセン)公は どう報いるおつもりですか?!!!』
外では 見張りを続ける高島(コド)を引きずっていく竹方(チュクパン)
『美生(ミセン)公の担当なのに!』
『もっと頭を使え 美生(ミセン)は大男甫(テナムボ)に
大男甫(テナムボ)は白虎飛徒(ペッコピド)に
どうせ白虎飛徒(ペッコピド)に来るはずだ』
『白虎飛徒(ペッコピド)に知り合いが?』
『まったく! 先日新しく郎徒(ナンド)になった押梁州(アンニャンジュ)の
伽耶人たちが 十花郎(ファラン)の全部に配属されたろ』
※伽耶:6世紀半ばに滅亡 朝鮮半島南部にあった国
『ああ そうだった!』
『バカだな この大郎頭(テナンドゥ)様が 皆 手なずけてある』
『わぁ…』
『俺に任せてついて来い』
竹方(チュクパン)と高島(コド)が立ち去ってすぐ
これもまた茫然自失で美生(ミセン)が出てきた
『大男甫(テナムボ)はどこだ! 大変なことに… 行くぞ!』
世宗(セジョン)はピルタンに会っていた
『文をご覧になって父君は何とおっしゃった』
『何があろうと世宗(セジョン)公に従うと ご安心を』
『ではもう一度 父君の所へ行ってくれ お伝えしたいことがある』
その足でピルタンはまず虎才(ホジェ)の所へ…
『今から父君の所へ?』
『はいしかし… 徐羅伐(ソラボル)で一大事が起こりそうです』
さらに詳しく話そうとすると そこへ石品(ソクプム)が…
『いたのか』
『ああ まあな 用があるのでこれで失礼する』
『そうか』
白虎飛徒(ペッコピド)の訓練場にいる大男甫(テナムボ)
そこへ血相を変えて美生(ミセン)が…
『すべて春秋(チュンチュ)の計略だった! はめられたのだ…』
『はめられた?』
『何ということだ… この私が見抜けぬとは!
早く姉上が戻らねば大変なことになる』
『行き先を告げずチルスク郎(ラン)と侍女数人だけで行かれたと』
『一体どこだ どうやって捜せばいい!』
『侍女によると 最近セジュは様子が変だったとか』
『様子が?』
『ご病気でもないのに 寝てばかりいたそうです』
美生(ミセン)は はたとソルォンの言葉を思い出す
「セジュは これまでの人生に疑問を抱いておられる」
『分かったぞ あそこだ!』
『え?』
『チソ太后により宮殿を追われ また戻って来た時も
真智(チンジ)王の廃位の時も あそこで決断を下された
あの場所に間違いない!』
市場を進軍していく花郎(ファラン)の一団が
通りすがりの笠をかぶった男2人に紙切れを渡す
『王女様に報告を!』
紙に書かれた場所を読んでいるのは 竹方(チュクパン)と高島(コド)だ
その頃徳曼(トンマン)のそばにはキム・ユシンが付き添っていた
『王女様 何が不安なのです?』
『私はミシルを信じていました』
『ええ』
『ミシルは 誰より信頼できる敵です 日食でミシルを欺いた時も
あのような策が実行できたのは ミシルを信じていたから』
『ミシルの洞察力を信じておられましたね』
『でも今は 信じることができません
今の状況を放置するのも 計略を見抜けないのもミシルらしくない
あり得ぬことです ミシルに何か変化が起きているのです』
ミシルは チルスクを従え 毗曇(ピダム)に手を取られながら
ようやく目的地に到着していた
『ここだ よい所だろう 心が乱れると来る場所だ』
『心が乱れる?あんな大変なことをしたのだから当然です』
毗曇(ピダム)の言葉には答えず ミシルはただ微笑んでいる
その頃 竹方(チュクパン)と高島(コド)が徳曼(トンマン)のもとへ…
『王女様!ミシルセジュの行方が分かりました』
『どこだ』
『五指(オジ)山 閑雲(ハヌン)渓谷 佳穏(カオン)亭です』
『すぐに出発を』
毗曇(ピダム)は ミシルの話に大声で笑っている
『本当ですか?修業がつらくて師匠が泣いた? アハハハ…』
『武芸の師匠だった居柒夫(コチルブ)公を困らせようと 蛇を放ったことも』
『本当にそんなことを? アッハハハ…』
『陛下の寵愛を受けている私に 居柒夫(コチルブ)公は厳しくできないし
ソルォン公は暇さえあれば花郎(ファラン)を誘って遊山に出かけた
雲上人(ウンサンイン)というあだ名もつけられたわ』
『師匠のあだ名は?』
『“護国仙(ホグクソン)” 国を守る仙人だ』
『セジュは?』
『“お前たち3人なら天下を手にできよう”と 可愛がってくださった
チヌン大帝は…』
『セジュのあだ名も教えてください』
ミシルは 毗曇(ピダム)の方に向き直った
『“傾国之色(キョングクチセク)”だ』
『傾国之色(キョングクチセク)というと 国を傾けるほどの美女ですね』
『花郎(ファラン)たちはそう言って
私の色香はいつか国を傾けると皮肉ったのだ 陛下への警告でもある』
毗曇(ピダム)は じっとミシルを見つめた
『不服でしたか』
『“不服か”だと? その頃からだったか…
王妃などという しがない夢を抱いたのは』
『“しがない夢”?』
石品(ソクプム)は 虎才(ホジェ)の所で立ち聞きしたことをソルォンに報告する
『ピルタン郎(ラン)が “徐羅伐(ソラボル)に一大事が起こる” と』
『その後 父親の所へ?』
『はい』
『父君のチュジン公は上州停(サンジュジョン)の幢主(タンジュ)で
徐羅伐(ソラボル)に一番近い兵力です』
『はい 5千を超える精鋭兵です』
※上州停(サンジュジョン):上州(サンジュ)におかれた軍営
※幢主(タンジュ):郡に派遣された地方官
『世宗(セジョン)公は我々と内乱でも始める気か
何か誤解を解く方法はないものか… こうももろく崩れるとは』
『春秋(チュンチュ)公を副君(プグン)にし一族の利を追求しましょう』
※副君(プグン):王の息子ではない王位継承者
『もしくは檜山(フェサン)と推火郡(チュファグン)から兵を集め先制攻撃を!』
『今からでは遅い 上州停(サンジュジョン)が徐羅伐(ソラボル)に一番近い
兵の到着前に終わってしまう』
『ならば兵部(ピョンブ)の兵を…』
『そんなことをしたら私が乱の首謀者にされる』
『ではどうしろと?』
『セジュが収拾するべきだ 戻られるまで自衛策を講じよう』
『自衛策というと?』
じっと目を閉じ考え込むソルォン
『父上!』
『……』
『一刻を争うのです』
『徳充郎(トクチュンラン)と朴義郎(パグィラン) その郎徒(ナンド)たちを呼べ』
この動きを察知した夏宗(ハジョン)が…
『父上!!!徳充(トクチュン)らが郎徒(ナンド)を連れてソルォンの屋敷へ!』
『何だと?』
『ピルタン郎(ラン)が父親に会いに行ったことが知られたら…』
『チュジン公は?』
『あと1日はかかるかと』
『あぁ…』
『チュジン公が到着するまで兵を配置し屋敷を守らねば!
でも徐羅伐(ソラボル)ではソルォン公の兵部(ピョンブ)が最強です』
『兵部(ピョンブ)の兵は動かせぬはずだ
兵部(ピョンブ)を動かせば政変になるからな』
『分かりませんよ とにかく兵を集めます!』
『春秋(チュンチュ)は?』
『…捜しているのですが見つかりません 捜索を急がせます!』
徳充(トクチュン)と朴義(パグィ)たちは 宝宗(ポジョン)の言葉に驚く
『そんなことが許されるのか!世宗(セジョン)公を…』
『上大等(サンデドゥン)だぞ』
『我が一族と命運を共にすると 皆 誓ったはずだ』
『だが この計画は命懸けだ』
先に 石品(ソクプム)が…
『私はやる』
『石品郎(ソクプムラン)… 恩に着る』
『私もだ』
『よし やろう』
石品(ソクプム)に続き 次々に賛同する花郎(ファラン)たち
一方 夏宗(ハジョン)の側でも…
『今すぐ屋敷へ向かい警備につけ よいな』
『はい!』
そこへ 血相を変えた下男が報告に来る
宝宗(ポジョン)の側が 世宗(セジョン)公の屋敷に乱入したのだった…!
『何の真似だ!』
『危害は加えません 誤解を解きたいだけです』
『我々と一緒に来ていただきます』
『こんなことをしてただで済むと思うな!』
『お連れしろ』
報告を受けた夏宗(ハジョン)は仰天する
『父上が連れ去られただと?!!!』
『さようです』
『救出に行きましょう』
『もっと兵を集めねば』
『宝宗(ポジョン)石品(ソクプム)徳充(トクチュン)朴義(パグィ)ソニョル…
ソルォン公もいたのか?』
『いいえ いらっしゃいません』
『では ソルォン公も今は1人か…』
世宗(セジョン)を乗せた輿を囲み 宝宗(ポジョン)の一団が進んでいる
そこへサンタクが…
『宝宗郎(ポジョンラン)! ソルォン公が…』『父上がどうした 何があった!』
『春秋(チュンチュ)が皆を分裂させ 新勢力の確立を計画しているなら…』
『もう1つの事態とは… 春秋(チュンチュ)公がミシルをはめたのです』
(春秋(チュンチュ)は幼くない いいえ 春秋(チュンチュ)は既に舞台に立った)
この知らせは 王室にとってもミシル側にとっても 衝撃だった
ソルォンと宝宗(ポジョン)は 石品(ソクプム)から報告を受けて驚いた
『何だと?それで春秋(チュンチュ)公がどうしたと?』
『今 宝良(ポリャン)様と便殿で陛下にお会いしています
すでに… 婚礼を挙げたとか』
『婚礼を?』
父である宝宗(ポジョン)は絶句する
便殿を出た春秋(チュンチュ)は 徳曼(トンマン)に会う
『分かりましたか 私がミシルを利用したのです』
『ええ でも…』
『なぜ簡単にだまされたか?分かっていてもどうしようもなかったのです』
『そなたが彼らの不安と疑念をかき立てた
人は不安な時 動くものだからか?』
『ええ 最初から計画していました
私はミシルのように 兵や花郎(ファラン)を動かしたり
叔母上のように 日食の時期を計算し偽の石碑を作るような
面倒な真似はしません ただ… この舌を動かすだけです』
『……』
※花郎(ファラン):美しく文武両道に秀でた青年の精鋭集団
『整然たるアリの行列が 私のひと言で崩れるのを見ていればいい』
『確かにそうなった だがすべての可能性を想定したのか』
『もちろんです』
『失敗したら?』
『それはあり得ません』
『万が一失敗したら 私が手を差し伸べるからその手をつかめ』
何を言っているのだと バカにしたような春秋(チュンチュ)の表情
『約束できるか』
『ええ いいでしょう 万が一失敗したら』
春秋(チュンチュ)が徳曼(トンマン)と話す間 外で待っている宝良(ポリャン)
そこへ ソルォンと宝宗(ポジョン)が息せき切ってやって来た
『宝良(ポリャン)!』
『お父様』
険しい顔でソルォンが…
『どういうことだ』
『……』
そこへ 春秋(チュンチュ)が出てきて頭を下げる
『義父上 ご挨拶を』
『……』
『若さゆえにこうなってしまいました ご理解いただけますね?』
その様子を さらに後方から世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)父子が見ている
春秋(チュンチュ)たちが立ち去り 両者は睨み合う
『我々が宝良(ポリャン)を連れ去ったと?!我々が婚礼まで挙げてやったと?』
『誤解でした 我々は本当に知らなかったのです
セジュと世宗(セジョン)公の約束は存じていますので
春秋(チュンチュ)公から宝良(ポリャン)を遠ざけようとしました』
『まさか春秋(チュンチュ)公が宝良(ポリャン)を連れ去るとは…』
『信じてください 信頼し合わねば春秋(チュンチュ)公の計略にはまります』
今や必死に懇願するしかないソルォンと宝宗(ポジョン)
世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)は容易には納得しない
『そなたが私なら 信じられるか?』
憤慨したままの世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)は美生(ミセン)のもとへ
『叔父上 一体どうなっているんですか?!!!』
『セジュはどこにいる!!!』
※セジュ:王の印を管理する役職
『落ち着いてください 私も捜しています』
『叔父上なら落ち着いていられます?問題は起こるし母上はいない!』
『宝良(ポリャン)を春秋(チュンチュ)公と婚姻させぬ約束は私も知っています
でも仕方ないでしょう!分別のない春秋(チュンチュ)が早まった真似を…』
『そうではない!ソルォンが手を回したのだ』
『ソルォン公がこんな無茶をしますか!それはないでしょう
ですからそう興奮せず落ち着いてください
私が春秋(チュンチュ)公に会ってきます』
美生(ミセン)が足早に立ち去り 世宗(セジョン)は深いため息をつく
『もはや先がまったく見えぬ状態だ』
『花郎(ファラン)と郎徒(ナンド)に命じてソルォンの屋敷の監視を!』
『私はピルタン郎(ラン)に会わねば』
ミシルの夫であることと 身分の高さだけが優位に立っていられる理由だった
武功と戦術に関しては全面的にミシルの信頼を得ているソルォン父子
その上 王室の縁続きになり身分の高さまで負けてしまったら…
世宗(セジョン)父子にとっては 決して見過ごせない事態だったのだ
石品(ソクプム)たちからミシルの行方を聞き 驚くソルォン
『セジュが遊山に出かけられただと?』
『チルスク様と数人の従者だけをお連れに』
『世宗(セジョン)公と夏宗(ハジョン)兄上があの様子なのに 一大事です』
『今すぐ郎徒(ナンド)を連れてセジュを捜せ!』
『はい!』
※郎徒(ナンド):花郎(ファラン)である主に仕える構成員
『いや待て お前たち3人は徐羅伐(ソラボル)に残り指示を待て』
『はい』
※徐羅伐(ソラボル):新羅の首都 現在の慶州(キョンジュ)
『お前が郎徒(ナンド)を率いて捜索しろ』
『承知しました』
ソルォンは 主要な花郎(ファラン)を手元に置き サンタクに捜索を命じた
そこへ 美生(ミセン)が…
『姉上は見つかりましたか』
『いいえ』
『世宗(セジョン)義兄上と夏宗(ハジョン)は私がなだめましたが…』
『こんな時に なぜ母上は遊山などに?』
答えられない美生(ミセン)
息子の問いにソルォンが…
『セジュは これまでの人生に疑問を抱いておられる
胸騒ぎがします 心配でなりません』
王室でも 春秋(チュンチュ)のことについて話し合われていた
『春秋(チュンチュ)が問題を起こしました』
『一体どうなっているのだ』
王と王妃の疑問に答えるヨンチュン公
『春秋(チュンチュ)公はミシルに利用されたのではなく
逆に利用したのでしょう』
『春秋(チュンチュ)公が?』
『はい ご覧になった通り この婚姻は
上大等(サンデドゥン)とソルォン公を分裂させるよい手です』
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
ヨンチュン公の見解にキム・ソヒョンと万明(マンミョン)夫人が…
『だがミシルがそう簡単にだまされるわけが…』
『こんな時に遊山に出かけたのも妙です』
真平(チンピョン)王もこれに同意する
『ああ 確かに妙だ ミシルらしくない』
徳曼(トンマン)は キム・ユシンと閼川(アルチョン)
そして月夜(ウォルヤ)を交えて話し合う
『春秋(チュンチュ)は得意気ですが…』
『ミシルに春秋(チュンチュ)公の策が見抜けぬとは思えません』
『ええ 自分の勢力の団結を最優先に考えるミシルです』
『しかし こんな時に遊山に出かけるとは』
『何はともあれ連中の分裂は願ってもないことです
我々はこの状況を生かす策を練るだけです
王女様はそんなに不安に思わないでください』
『いいえ それが不安なのです』
『え?』
『ミシルが… ミシルがだまされた
春秋(チュンチュ)はしてはならぬ婚姻を結び…』
『それで上大等(サンデドゥン)とソルォン公が分裂している…』
『なのに何も手を打とうとしないとは それが私を不安にさせます
ミシルに 一体どのような心境の変化が…』
徳曼(トンマン)の執務室を出た閼川(アルチョン)と月夜(ウォルヤ)は
待っていた雪地(ソルチ)と郎徒(ナンド)たちに向かって厳しい態度を見せる
『ミシルが黙って宮殿を出たなら 上大等(サンデドゥン)やソルォン公
美生(ミセン)公も捜しているはず』
『彼らの動きを見張ればいい』
『我々が上大等(サンデドゥン)を監視します』
『頼む 高島(コド)お前は美生(ミセン)公を
谷使欣(コクサフン)と大風(テプン)はソルォン公を すぐに行け!
妙な動きがあればすぐに報告しろ』
『はい!』
直ちに行動を開始する一同だが
高島(コド)が 谷使欣(コクサフン)たちを引き止める
『竹方(チュクパン)兄貴は?』
『婚姻の話を聞いて慌てて出て行ったぞ』
『それからは見てない お前も頑張って監視しろ』
『何だよ 1人で遊びに出かけたのか? よし 美生(ミセン)公の監視だ!』
その頃竹方(チュクパン)は 春秋(チュンチュ)の部屋に呼ばれていた
『大郎頭(テナンドゥ)!よく来た
そなたがいなければ計画を立てられなかった』
『え?』
※大郎頭(テナンドゥ):郎徒(ナンド)の6番目の等級
『竹方(チュクパン)大郎頭(テナンドゥ)にお茶をお出しせぬか!』
『はい』
『そんなことより春秋(チュンチュ)公 婚姻はまずいですよ』
『とにかく まあ座れ』
席につかせるなり 竹方(チュクパン)の手に金を握らせる春秋(チュンチュ)
『私の行動に対する皆の反応を教えてくれ』
『今日は話を聞かせに来たわけじゃ…
徳曼(トンマン)王女様を苦しめないでください』
名残惜しそうにしながらも 金の入った巾着を返そうとする竹方(チュクパン)
『そなたは話をするのが実にうまい
そなたに聞いた話から 今回の策を思いついた』
『そんな… やめてください 私を密偵に仕立てようというのですか』
『こうなったら… 私に仕えてみないか?』
『はい?』
出てきた竹方(チュクパン)は 手にしっかりと巾着を握らされ
茫然自失の表情になっている
『あぁ… また話をしてしまった 本当に不思議なお方だ
話したくないことまで ついぺらぺらと 化かされた気分だ…』
突然の人の気配に 咄嗟に隠れる竹方(チュクパン)
美生(ミセン)公が春秋(チュンチュ)の部屋に入って行く
(美生(ミセン)がなぜここに…)
すると背後から高島(コド)が現れ 驚く竹方(チュクパン)
『何でかな』
『驚かせるな!ここで何してる』
『そっちこそ 皆がミシルセジュを捜してる』
『ミシルセジュを捜してるのか?』
『うん それで連中を監視してる 俺は美生(ミセン)公の担当』
中では…
『春秋(チュンチュ)公 お察ししますよ
若さゆえに先走り 宝良(ポリャン)と… お気持ちは分かります
ですがそれをすぐ行動に移されては 多くの人に迷惑がかかります』
美生(ミセン)を睨む春秋(チュンチュ)
しかし美生(ミセン)は構わず話し続ける
『利害関係が複雑ゆえ詳しくは話せませんが…』
『美生(ミセン)公は 世の中の動きに明るい方です』
『ん?』
『今 何が起きているかもお分かりでしょう』
『え?』
『母の天明(チョンミョン)王女は 大男甫(テナムボ)に殺されました』
美生(ミセン)の顔から血の気が引く
息子である大男甫(テナムボ)の件は終わったと思っていたのだ
『私は大男甫(テナムボ)に情けをかけ生かした』
『チュ…春秋(チュンチュ)公』
『私の恩に美生(ミセン)公は どう報いるおつもりですか?!!!』
外では 見張りを続ける高島(コド)を引きずっていく竹方(チュクパン)
『美生(ミセン)公の担当なのに!』
『もっと頭を使え 美生(ミセン)は大男甫(テナムボ)に
大男甫(テナムボ)は白虎飛徒(ペッコピド)に
どうせ白虎飛徒(ペッコピド)に来るはずだ』
『白虎飛徒(ペッコピド)に知り合いが?』
『まったく! 先日新しく郎徒(ナンド)になった押梁州(アンニャンジュ)の
伽耶人たちが 十花郎(ファラン)の全部に配属されたろ』
※伽耶:6世紀半ばに滅亡 朝鮮半島南部にあった国
『ああ そうだった!』
『バカだな この大郎頭(テナンドゥ)様が 皆 手なずけてある』
『わぁ…』
『俺に任せてついて来い』
竹方(チュクパン)と高島(コド)が立ち去ってすぐ
これもまた茫然自失で美生(ミセン)が出てきた
『大男甫(テナムボ)はどこだ! 大変なことに… 行くぞ!』
世宗(セジョン)はピルタンに会っていた
『文をご覧になって父君は何とおっしゃった』
『何があろうと世宗(セジョン)公に従うと ご安心を』
『ではもう一度 父君の所へ行ってくれ お伝えしたいことがある』
その足でピルタンはまず虎才(ホジェ)の所へ…
『今から父君の所へ?』
『はいしかし… 徐羅伐(ソラボル)で一大事が起こりそうです』
さらに詳しく話そうとすると そこへ石品(ソクプム)が…
『いたのか』
『ああ まあな 用があるのでこれで失礼する』
『そうか』
白虎飛徒(ペッコピド)の訓練場にいる大男甫(テナムボ)
そこへ血相を変えて美生(ミセン)が…
『すべて春秋(チュンチュ)の計略だった! はめられたのだ…』
『はめられた?』
『何ということだ… この私が見抜けぬとは!
早く姉上が戻らねば大変なことになる』
『行き先を告げずチルスク郎(ラン)と侍女数人だけで行かれたと』
『一体どこだ どうやって捜せばいい!』
『侍女によると 最近セジュは様子が変だったとか』
『様子が?』
『ご病気でもないのに 寝てばかりいたそうです』
美生(ミセン)は はたとソルォンの言葉を思い出す
「セジュは これまでの人生に疑問を抱いておられる」
『分かったぞ あそこだ!』
『え?』
『チソ太后により宮殿を追われ また戻って来た時も
真智(チンジ)王の廃位の時も あそこで決断を下された
あの場所に間違いない!』
市場を進軍していく花郎(ファラン)の一団が
通りすがりの笠をかぶった男2人に紙切れを渡す
『王女様に報告を!』
紙に書かれた場所を読んでいるのは 竹方(チュクパン)と高島(コド)だ
その頃徳曼(トンマン)のそばにはキム・ユシンが付き添っていた
『王女様 何が不安なのです?』
『私はミシルを信じていました』
『ええ』
『ミシルは 誰より信頼できる敵です 日食でミシルを欺いた時も
あのような策が実行できたのは ミシルを信じていたから』
『ミシルの洞察力を信じておられましたね』
『でも今は 信じることができません
今の状況を放置するのも 計略を見抜けないのもミシルらしくない
あり得ぬことです ミシルに何か変化が起きているのです』
ミシルは チルスクを従え 毗曇(ピダム)に手を取られながら
ようやく目的地に到着していた
『ここだ よい所だろう 心が乱れると来る場所だ』
『心が乱れる?あんな大変なことをしたのだから当然です』
毗曇(ピダム)の言葉には答えず ミシルはただ微笑んでいる
その頃 竹方(チュクパン)と高島(コド)が徳曼(トンマン)のもとへ…
『王女様!ミシルセジュの行方が分かりました』
『どこだ』
『五指(オジ)山 閑雲(ハヌン)渓谷 佳穏(カオン)亭です』
『すぐに出発を』
毗曇(ピダム)は ミシルの話に大声で笑っている
『本当ですか?修業がつらくて師匠が泣いた? アハハハ…』
『武芸の師匠だった居柒夫(コチルブ)公を困らせようと 蛇を放ったことも』
『本当にそんなことを? アッハハハ…』
『陛下の寵愛を受けている私に 居柒夫(コチルブ)公は厳しくできないし
ソルォン公は暇さえあれば花郎(ファラン)を誘って遊山に出かけた
雲上人(ウンサンイン)というあだ名もつけられたわ』
『師匠のあだ名は?』
『“護国仙(ホグクソン)” 国を守る仙人だ』
『セジュは?』
『“お前たち3人なら天下を手にできよう”と 可愛がってくださった
チヌン大帝は…』
『セジュのあだ名も教えてください』
ミシルは 毗曇(ピダム)の方に向き直った
『“傾国之色(キョングクチセク)”だ』
『傾国之色(キョングクチセク)というと 国を傾けるほどの美女ですね』
『花郎(ファラン)たちはそう言って
私の色香はいつか国を傾けると皮肉ったのだ 陛下への警告でもある』
毗曇(ピダム)は じっとミシルを見つめた
『不服でしたか』
『“不服か”だと? その頃からだったか…
王妃などという しがない夢を抱いたのは』
『“しがない夢”?』
石品(ソクプム)は 虎才(ホジェ)の所で立ち聞きしたことをソルォンに報告する
『ピルタン郎(ラン)が “徐羅伐(ソラボル)に一大事が起こる” と』
『その後 父親の所へ?』
『はい』
『父君のチュジン公は上州停(サンジュジョン)の幢主(タンジュ)で
徐羅伐(ソラボル)に一番近い兵力です』
『はい 5千を超える精鋭兵です』
※上州停(サンジュジョン):上州(サンジュ)におかれた軍営
※幢主(タンジュ):郡に派遣された地方官
『世宗(セジョン)公は我々と内乱でも始める気か
何か誤解を解く方法はないものか… こうももろく崩れるとは』
『春秋(チュンチュ)公を副君(プグン)にし一族の利を追求しましょう』
※副君(プグン):王の息子ではない王位継承者
『もしくは檜山(フェサン)と推火郡(チュファグン)から兵を集め先制攻撃を!』
『今からでは遅い 上州停(サンジュジョン)が徐羅伐(ソラボル)に一番近い
兵の到着前に終わってしまう』
『ならば兵部(ピョンブ)の兵を…』
『そんなことをしたら私が乱の首謀者にされる』
『ではどうしろと?』
『セジュが収拾するべきだ 戻られるまで自衛策を講じよう』
『自衛策というと?』
じっと目を閉じ考え込むソルォン
『父上!』
『……』
『一刻を争うのです』
『徳充郎(トクチュンラン)と朴義郎(パグィラン) その郎徒(ナンド)たちを呼べ』
この動きを察知した夏宗(ハジョン)が…
『父上!!!徳充(トクチュン)らが郎徒(ナンド)を連れてソルォンの屋敷へ!』
『何だと?』
『ピルタン郎(ラン)が父親に会いに行ったことが知られたら…』
『チュジン公は?』
『あと1日はかかるかと』
『あぁ…』
『チュジン公が到着するまで兵を配置し屋敷を守らねば!
でも徐羅伐(ソラボル)ではソルォン公の兵部(ピョンブ)が最強です』
『兵部(ピョンブ)の兵は動かせぬはずだ
兵部(ピョンブ)を動かせば政変になるからな』
『分かりませんよ とにかく兵を集めます!』
『春秋(チュンチュ)は?』
『…捜しているのですが見つかりません 捜索を急がせます!』
徳充(トクチュン)と朴義(パグィ)たちは 宝宗(ポジョン)の言葉に驚く
『そんなことが許されるのか!世宗(セジョン)公を…』
『上大等(サンデドゥン)だぞ』
『我が一族と命運を共にすると 皆 誓ったはずだ』
『だが この計画は命懸けだ』
先に 石品(ソクプム)が…
『私はやる』
『石品郎(ソクプムラン)… 恩に着る』
『私もだ』
『よし やろう』
石品(ソクプム)に続き 次々に賛同する花郎(ファラン)たち
一方 夏宗(ハジョン)の側でも…
『今すぐ屋敷へ向かい警備につけ よいな』
『はい!』
そこへ 血相を変えた下男が報告に来る
宝宗(ポジョン)の側が 世宗(セジョン)公の屋敷に乱入したのだった…!
『何の真似だ!』
『危害は加えません 誤解を解きたいだけです』
『我々と一緒に来ていただきます』
『こんなことをしてただで済むと思うな!』
『お連れしろ』
報告を受けた夏宗(ハジョン)は仰天する
『父上が連れ去られただと?!!!』
『さようです』
『救出に行きましょう』
『もっと兵を集めねば』
『宝宗(ポジョン)石品(ソクプム)徳充(トクチュン)朴義(パグィ)ソニョル…
ソルォン公もいたのか?』
『いいえ いらっしゃいません』
『では ソルォン公も今は1人か…』
世宗(セジョン)を乗せた輿を囲み 宝宗(ポジョン)の一団が進んでいる
そこへサンタクが…
『宝宗郎(ポジョンラン)! ソルォン公が…』『父上がどうした 何があった!』
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