善徳女王 44話#2 ミシルの乱

ミシル側の不可解な行動から一夜明けた早朝
1人の郎徒(ナンド)がキム・ソヒョンの屋敷を訪ね
万明(マンミョン)夫人が対応する

『緊急で和白(ファベク)会議が…

お伝えしたいのですが』
『まだ休んでいるので 私が伝えます』
『それでは印をお願いします』

同時にサンタクが世宗(セジョン)に報告している

『和白(ファベク)会議の招集状をヨンチュン公宅に届けました』

『ヨンチュン公に直接渡したのか?』
『昨晩飲み過ぎて まだお休みだったので お渡しするよう伝えました』
『そうか… 印はもらったか?』
『はい』

まだ深い眠りの中にいるキム・ソヒョンを 万明(マンミョン)付近が揺り起こす

『ソヒョン公 ソヒョン公 起きてください』

徳曼(トンマン)の執務室

雪地(ソルチ)が徳曼(トンマン)に名簿を渡す

『王女様に賛同している貴族です』

『チュジン公に会いました 租税案には肯定的ですが まだ分かりません』
『徐羅伐(ソラボル)に近い上州停(サンジュジョン)に精鋭兵を持っています
必ず味方にすべきです』

月夜(ウォルヤ)の意見に春秋(チュンチュ)が…

『大貴族ではありませんが 世宗(セジョン)公と親しいので当てにできません』
『ピルタン郎(ラン)にも会ってみます それから月夜郎(ウォルヤラン)は
こちらの復耶会の拠点をしっかり守って下さい』

一方 何度起こしても目覚めない夫に

先ほど手渡された書簡を見てしまう万明(マンミョン)夫人
そしてその内容を読み 驚愕する…!

『ソ…ソヒョン公 ソヒョン公!!!』

その頃 ヨンチュン公もまたようやく目覚め 卓上に置かれた書簡を発見する

そして同じように目覚めた毗曇(ピダム)

ヨムジョンの根城の椅子に縄で縛られている
目の前には うろたえるヨムジョンが…

『何だ? お前… まさか酒に薬を入れたのか?

おい… 正気か? 死にたいか!!!』
『し…静かにしてくれ 俺も混乱しているんだ』
『何なんだよ 早くほどけ!!! クソッ!この野郎!!!』
『騒ぐな! 静かにしてろ 頭を整理するから』
『おかしくなったのか 足まで縛りやがって!!!』
『少し落ち着くんだ』
『近くに寄れ こっちに来いよ!!! 早く来い!!!』

ようやく目覚めたキム・ソヒョンは 愕然としている

万明(マンミョン)夫人は状況を理解し絶望的になる

『すべての政務から王女の権限を奪うために和白(ファベク)会議を開くと』

『私とヨンチュン公がいるのに なぜこのような… すぐに行く 支度を頼む!』
『はい』

その頃徳曼(トンマン)の執務室には大風(テプン)が報告に来ていた

動揺する月夜(ウォルヤ)

『どういうことだ 案件は何だと?』

『王女様を政務から退かせる案件とのことです』
『何ということだ…もう始まるのか?』
『大等(テドゥン)たちが集まっています』
『しかし和白(ファベク)会議は満場一致制です
ヨンチュン公とソヒョン公がいれば通りません』
『そうです 王女様が留守をしている間に 何ということだ!』

月夜(ウォルヤ)と雪地(ソルチ)の見解に 春秋(チュンチュ)が…

『いいえ 何かがおかしい 和白(ファベク)会議…』

列仙(ヨルソン)閣に ヨンチュン公とソヒョン公を除く

8人の大等(テドゥン)が集った

『全員そろっていませんね』

『ヨンチュン公とソヒョン公がまだです』
『もう時間が過ぎています 上大等(サンデドゥン)がいらしたので始めましょう』

※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理

『何と?満場一致で議決すべきでしょう』

『もちろん満場一致の原則に従います 誰が原則に従わないと?』

世宗(セジョン)夏宗(ハジョン)に続き 美生(ミセン)も手はず通りに事を進める

『全員そろっていないのに なぜ始めるのです?』

『8名の大等(テドゥン)が出席しています この8名で満場一致となればいい』
『しかし… そのような前例はありません』
『時間を守らない大等(テドゥン)のために 会議を遅らせるのですか?』
『招集状を受け取ったという印もある』
『この和白(ファベク)会議から
出席した大等(テドゥン)の満場一致で議決することとする』
『そうしましょう 待つ必要はない 賛成です!』
『律令の中にも 全員の出席が必要とは書いてありません
満場一致で議決するとあるだけです』
『賛成します』
『私も賛成です』
『賛成です』
『私も賛成します』
『……賛成します』
『では 緊急の和白(ファベク)会議を始めることにします』

最後まで抵抗していた大等(テドゥン)も賛成し 和白(ファベク)会議が始まった

会議に立ち会う王の側近が 侍女に耳打ちし 事態が伝えられた
キム・ユシンと閼川(アルチョン)のもとには
谷使欣(コクサフン)が報告しに来た

『8名の大等(テドゥン)だけで和白(ファベク)会議が始まった?!!!』

『はい 列仙(ヨルソン)閣で 会議は進行中です』
『王女様の政務の件か?』
『はい どうしましょう…』
『ヨンチュン公とソヒョン公抜きで始めるとは!』
『まさか…』
『風月主(プンウォルチュ)…
昨晩ソヒョン公は夏宗(ハジョン)公と飲んだそうだな』
『まさか出席できないようにして
8名の大等(テドゥン)だけで案件を通す気か?』
『何と卑劣な奴らだ!!!花郎(ファラン)出身者がこんな汚い真似を!』
『ヨンチュン公とソヒョン公は 今どこに?』

2人は 息せき切って列仙(ヨルソン)閣を目指していた

一方 ヨムジョンによって拉致された毗曇(ピダム)は…

『ミシルが徐羅伐(ソラボル)から離れろと言ったのか?』

『ああ 今日と明日の2日間だ…』
『なぜ遊山に出ずに俺を縛った?』
『……』
『おい!!!!!』

全身を縛っておきながら それでも毗曇(ピダム)に怒鳴られ怯えるヨムジョン

『答えろ!!!魂胆は何だ?』

『魂胆なんてない!判断する時間をくれ!』
『何を判断するんだよ』
『お前は何者だ なぜミシルが動いた?
ミシルが直接来たのは今回が初めてだ』
『……』
『それに今日と明日だと言った 何かが起こるのは間違いない 何だと思う?』

この言葉にハッとなる毗曇(ピダム)

『まさか 本当にミシルが… ほどけ 早くしろ…』

『そんな単純な問題じゃない!』
『この野郎…』
『おかしくなりそうだ!!!お前を縛り付けとくのも命懸けだし
お前を放せば天下のミシルを敵に回す!!!』
『死にたいのか?早くほどけ!!!!!』

身動きできない毗曇(ピダム)の胸ぐらを掴むヨムジョン

『俺を説得してみろ!ミシルを敵に回すよう俺を説得できるか?!!!


列仙(ヨルソン)閣に着いたキム・ソヒョンだが 入口には兵士が…!

しっかりと腕を組み 中に入れないようにしているのだった

『どけ!和白(ファベク)会議に出席する』

『……』
『何をしておる 早くどけ!通すのだ!通せと言っているのだ!!!』

遅れてヨンチュン公も到着した

『何事です?』

『こやつらが入らせないようにしているのです!』
『では 私たちを閉め出して案件を通すつもりですか!』
『そのようです 阻止せねば!』
『何と卑劣な真似を! お前ら ここを通せ!!!』
『この野郎 入らねばならぬ!!!』

その頃ユシンと閼川(アルチョン)は 侍衛府(シウィブ)を招集していた

『みんな集まったか?』

『はい』

最前列の竹方(チュクパン)が…

『あの…本当なんですか?

昨晩 酒を飲ませて 今朝 緊急の和白(ファベク)会議を?
まったく なんて汚い奴らなんだ』
『10人の大等(テドゥン)のうち8人だけ集めるなんて
ゴロツキじゃあるまいし 恥ずかしくないのか!』

そこへ 大風(テプン)と谷使欣(コクサフン)が…

『風月主(プンウォルチュ)!お2人とも到着しました』

『そうか これで大丈夫だ』
『しかしお2人が入れないよう 兵が入口をふさいでいます』
『兵が? 風月主(プンウォルチュ)黙って見ているのですか?!
こんなことは許されない!!!』
『竹方(チュクパン)!高島(コド)!王女様に報告し指示を仰げ!』
『はい!』
『それじゃ侍衛府(シウィブ)は 私に従え』
『はい!』

※侍衛府(シウィブ):近衛隊

この報告を受けた徳曼(トンマン)

同席している春秋(チュンチュ) 月夜(ウォルヤ) 雪地(ソルチ)が激怒する

『何と卑劣なやり方だ!
参席を阻止し自分らだけで満場一致にさせるとは』
『……信じられないことです ミシルが… ミシルが!
ここまで壊れるとは あり得ないことです!』
『ミシルも結局この程度なのですね 王女様が買いかぶり過ぎたのです』

失望の色を見せる春秋(チュンチュ)

雪地(ソルチ)が…

『急いで行かねば 中止させましょう』

『むしろ好都合です 租税案の件で民と中小貴族は王女様に賛同している
こんな状況で 8名の大等(テドゥン)だけで満場一致とし案件を通す
しかも大等(テドゥン)の出席を阻止した どうなるでしょう』

笑みを浮かべて話す春秋(チュンチュ)の問いに 月夜(ウォルヤ)が…

『案件が通ったとしても… 反発は想像を絶する』

『ミシルは名分を重んじると言いましたね しかしミシルも結局は人間です
不安と焦りから 無謀な手を使った』
『いいえ 違います そんなはずはない 自滅するようなことはしない』

明確な答えは出せなくても 徳曼(トンマン)は感じ取っていた

言い知れない不安に涙さえ滲むのだった

8人の和白(ファベク)会議が進行している

『王女は和白(ファベク)会議の同意なく兵糧米を出し

神国の国防を危機にさらしました また不公平な租税案により
和白(ファベク)会議と貴族を混乱させた
これらの行為は 和白(ファベク)会議を無力化し廃止しようという
王女の意図によるものです よって王女は すべての政務から退き
王室の任務だけに集中するべきである これが今回の議題です』

議題が発表された和白(ファベク)会議

列仙(ヨルソン)閣の前では 居並ぶ兵士たちを押しのけようとして
ヨンチュン公とキム・ソヒョンが必死だった
そこへ ユシンと閼川(アルチョン)率いる侍衛府(シウィブ)がなだれ込む
一斉に剣を抜く侍衛府(シウィブ)に恐れをなす兵士たちだが
それでも突破されまいと固く腕組みをしている

『突破しろ!!!』

『はい!!!』

縛られたままの毗曇(ピダム)は 絶叫する

『王女様が危険だ!!!』

『どうして危険なのか説明しろ』
『時間がないと言ってるだろ!この状況を打開できるのは俺しかいない』
『何だと?』
『ユシンも閼川(アルチョン)も 春秋(チュンチュ)もだまされている!
俺が行かないと!!!』
『俺を説得するのが一番の近道だ
ミシルの意図は?お前とミシルの関係は?』
『いいからほどけ… 俺が行かなきゃ!』

侍衛府(シウィブ)が兵士を排除している頃 徳曼(トンマン)のもとへは

チュジン公の軍が徐羅伐(ソラボル)に向かって進軍しているとの報告が…!

『何ですって?!分かった チュジン公…』

月夜(ウォルヤ)と春秋(チュンチュ)は…

『上州停(サンジュジョン)の大規模な兵力では? なぜ急に』

『まさか まさか…』

そこへ雪地(ソルチ)が…!

『王女様!ご報告を』

『どうなった?』
『閼川郎(アルチョンラン)が侍衛府(シウィブ)を率い
列仙(ヨルソン)閣に突入しました!』

これを聞いた徳曼(トンマン)は愕然として春秋(チュンチュ)と目を合わせる

『すぐにやめさせなければ!!!』

必死にヨムジョンを説得する毗曇(ピダム)は…

『ミシルの意図は分かっただろ 軍事政変だよ』

『何だって?』
『ミシルが反乱を起こすんだよ!
こうなると思った あんなに言ったのに!バカな奴らめ』
『どういうことだ?』
『確実だ 絶対に間違いない おい 早くほどけ!』
『は…反乱だって?軍事政変?』

そこへ 兵士が報告しに来る

『上州停(サンジュジョン)の兵が徐羅伐(ソラボル)に向かっています!』

『やっぱり本当に!!!お前の言う通り…』
『ほどくんだ… 早くしろ!』

ユシンと閼川(アルチョン)の先導で 列仙(ヨルソン)閣に入った2人

賛成8人 反対2人となり
徳曼(トンマン)が政務から退く提議は否決された
そこで目配せをする世宗(セジョン)と美生(ミセン)

『何のつもりだ 和白(ファベク)会議に剣を持って入って来るとは!』

ハッとするユシンと閼川(アルチョン)

突入した2人の手には剣が…!
夏宗(ハジョン)が立ち上がり怒鳴り散らす

『お前たち 武装して乱入するとは!

風月主(プンウォルチュ)と侍衛府(シウィブ) これは大逆罪だ!!!』

列仙(ヨルソン)閣へ急ぐ徳曼(トンマン)と春秋(チュンチュ)

ミシルのもとには宝宗(ポジョン)が報告に…

『今 入ったそうです』

『分かりました では始めます』

ソルォンが兵部(ピョンブ)を動員する

列仙(ヨルソン)閣では世宗(セジョン)がさらに追及している

『列仙(ヨルソン)閣に武装兵が乱入したことはない!

逆賊キルソンさえ 和白(ファベク)会議の場に手出しができなかった』

※キルソン:阿達羅(アダルラ)王の時代に反乱を起こした逆賊

『だが お前たちは剣を持って乱入した』

ユシンと閼川(アルチョン)は今さらながらに剣を鞘におさめた

反論する閼川(アルチョン)

『しかし 列仙(ヨルソン)閣の前に兵士たちが…』

『おいお前!剣を持っていた兵がいたか?』

狼狽する2人

夏宗(ハジョン)の追及に 言葉もない
外の様子が騒がしくなる
ソルォンの軍勢が侍衛府(シウィブ)を包囲したのだ

『列仙(ヨルソン)閣に乱入した大罪人どもだ 全員捕らえよ!!!』

『はい!!!』

互いに剣を向け合う侍衛府(シウィブ)と兵部(ピョンブ)

そこへキム・ユシンと閼川(アルチョン)が…

『剣を収めよ!!!』

『侍衛府(シウィブ)は武装解除する 剣を下ろせ!』
『兵部令(ピョンブリョン) 武力衝突はいけません』

※兵部令(ピョンブリョン):新羅(シルラ)の軍の長官

蒼白になり列仙(ヨルソン)閣へ急ぐ徳曼(トンマン)

ユシンはソルォンに懇願する

『兵部令(ピョンブリョン)罰なら我々が受けます

まずは事態を収拾すべきです』
『乱入した風月主(プンウォルチュ)が何を言うか!!!』
『はい 罪は認めます しかし今は双方が剣を収め
大等(テドゥン)たちを安全な場所へ』

必死に説得するユシン

閼川(アルチョン)が今一度号令をかける

『侍衛府(シウィブ)は剣を置け!!!』

侍衛府(シウィブ)が地面に剣を置くと

ソルォンも号令をかける

『兵部(ピョンブ)も剣を収めよ!』

兵部(ピョンブ)の兵たちは剣を鞘に収めた

『大等(テドゥン)たちは外へ!』

『どうぞこちらへ』

世宗(セジョン)を先頭に 外へ出てくる大等(テドゥン)たち

すると屋根の上で1人の兵士が弓を構えている
矢が放たれ 見張りの兵士が倒れた
それが引き金となり ふたたび乱闘が始まる
もはや制止するユシンと閼川(アルチョン)の声を聞いている者はいない

『大等(テドゥン)たちを守れ!』

石品(ソクプム)が率先して世宗(セジョン)の隣へ…

懐から密かに短刀を取り出す石品(ソクプム)
世宗(セジョン)とチルスクに呼ばれた時に 入念な打ち合わせが行われたのだ

「ここだ 肋骨の8番目と9番目だ この間を正確に浅く刺すのだ」

「……はい」

一瞬の目配せの後 石品(ソクプム)は指定の位置を短刀で刺した


『上大等(サンデドゥン)がお倒れに!』

『刺されたぞ!!!』
『お倒れになった!!!』

刺した石品(ソクプム)本人が叫びだし その声に皆が注目する

『上大等(サンデドゥン)が殺されたーーーっ!!!』

ちょうど駆け付けた徳曼(トンマン)たちが…

『今のは… 何と聞こえた?』

『上大等(サンデドゥン)が… 殺されたと』

すでに徐羅伐(ソラボル)の近くまで進軍しているチュジン公の軍勢

『徐羅伐(ソラボル)の和白(ファベク)会議で上大等(サンデドゥン)が殺された

これは政変だ! この政変を鎮圧するために…
全軍 徐羅伐(ソラボル)へ向け進軍する!!!』

徳曼(トンマン)は 春秋(チュンチュ)の手をつかんだ

『これは政変だ ミシルの… 乱だ』

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