善徳女王 48話#1 公開尋問
『姉上の感情の高ぶりに 私はハラハラしましたよ』
(ミシルセジュ…)
美生(ミセン)が興奮して話し続けていると
どこかでミシルを呼ぶ 微かな声が聞こえる
(セジュ…)
※セジュ:王の印を管理する役職
『唐は国内の平定もまだだ 新羅(シルラ)との戦を望まないはず』
『ミシルセジュ!!!!!』
突然 見張り兵の横の花瓶が落ちて割れる
その見張り兵を装った人物が 何歩か進み出た
『何だと?こいつめ!』
怪しい人物に対し 一斉に槍が向けられた
それは…
その姿に誰もが驚き言葉を失う
『お… 王女様?』
徳曼(トンマン)は剣を投げ捨て ミシルの方を向きニヤリと笑う
『いつまでも驚いていないで捕らえたらどうです?』
『……』
『陛下も許可されたはず!私は上大等(サンデドゥン)の襲撃とは無関係ですが
陛下の臣下である以上 ご命令には従うのが当然 だから捕らえてください』
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
すべての家臣と兵士 そして唐の使臣が見ているのだ
どうするべきか ミシルをはじめ美生(ミセン)も夏宗(ハジョン)も動けない
『ただし ソヒョン公 ヨンチュン公 侍衛部令(シウィブリョン)そして侍衛部
陛下も一堂に会した上で 公開尋問を行うこと』
※侍衛部(シウィブ):近衛隊
『公開尋問だと?』
周囲の誰の耳にも聞こえ 皆が納得した
これを拒むことは ミシルの側にはできない状況だった
『もし誰かが私のことを 首謀者だと証言した場合
私は潔く 陛下の命令に従います』
かろうじて不敵な笑みで徳曼(トンマン)を見返すミシル
『大罪の嫌疑をかけられていても私は王女
これくらいの要求は通るでしょう
また 重傷の上大等(サンデドゥン)も
全て明らかにされた方が喜ばれるのでは?』
徳曼(トンマン)が1人で宮殿に向かったと聞き 毗曇(ピダム)は怒り狂う
同席する金春秋(キム・チュンチュ)
2人に報告しているのはキム・ユシンだ
『何だって?!!!』
『王女様が宮殿に戻られた?』
『ご自分の意志で』
ユシンの胸ぐらを掴む毗曇(ピダム)
『つまり 知っていながら行かせたのか?』
ミシルの執務室では 夏宗(ハジョン)が怒り狂っている
『正気とは思えません!!!自ら宮殿に戻るなんてどうかしている!!!』
ミシルは押し黙り ソルォンが…
『こうなった以上 仕方がありません 徳曼(トンマン)王女を殺さなくては…』
ミシルの側がそうなることを予測できるからこそ
徳曼(トンマン)を行かせたユシンを 毗曇(ピダム)は怒っているのだ
『死ぬぞ!!!宮殿に戻れば死ぬ!ミシルが生かしておかない』
『簡単には殺せない』
『何?』
ユシンにも言い分はあった
そして ユシンの読み通りミシルは…
『ええ 徳曼(トンマン)を殺すことは出来ない』
『母上 どうしてです! 大罪人だと自ら宮殿に戻って来たんですよ!』
『春秋(チュンチュ)がいる!!!』
ミシルが口にするまで 誰も春秋(チュンチュ)の存在に気付かなかった
『徳曼(トンマン)を殺せば
貴族や各勢力が春秋(チュンチュ)のもとへ集結する!
天明(チョンミョン)から徳曼(トンマン) そして春秋(チュンチュ)へ大義が移る
春秋(チュンチュ)も一緒に捕えたら 2人とも一緒に殺せば済みますが
宮殿の外で生きている! 春秋(チュンチュ)は… 生きているのです』
同じことを ユシンの口から聞いた毗曇(ピダム)
『春秋(チュンチュ)公だと?』
『公開尋問を要求した王女様を殺せば 大義は春秋(チュンチュ)公に移る
我々はミシルより弱いが 勢力を2つに分けられる
だが ミシルは強いが分けられない それが我々の強みだ
王女様はその強みを武器に ミシルに勝負をかけた』
それでも毗曇(ピダム)は ユシンを殴りつけた…!
『何様のつもりだ!!! 偉そうに 王女様を将棋の駒扱いするとは!!!』
ユシンは毗曇(ピダム)を睨み返す
責められるほど簡単に同意したわけではなかった
「絶対にいけません 下手をすれば命を落とします!」
「そうかもしれません」
「王女様!」
「でも私が宮殿に戻らなければ 戦いは終わらない
だからユシン郎(ラン) 私を行かせてください」
「死にゆく主君を止めない臣下もいなければ!
死にゆく思い人を… 止めない者もいません」
ユシンの言葉に 涙が滲む徳曼(トンマン)
「感情に流され大義を見失う者は 私の臣下にも思い人にもなれません
ミシルは有能です 私の逃亡中に国を掌握し政局を安定させるでしょう
ミシルを強硬手段に出させて 貴族たちに選択させる
それには この方法しかないのです」
「しかしながら 私には無理です
王女様や春秋(チュンチュ)公を将棋の駒のように扱うなど…」
「私たちは… 歴史の前では駒に過ぎません」
徳曼(トンマン)に言われた言葉を ユシンは口にする
『我々は 歴史の前では将棋の駒に過ぎない
自分の居場所で役目を果たすまでだ
王女様がご自分の居場所に戻るのを 止める名目がなかった』
『愚直な人間が変わると恐ろしくなるというが お前は本当に変わったな』
『……』
『お前は新羅(シルラ)のことしか頭にないのか?』
※新羅(シルラ):朝鮮半島南東部から発展し 後に三国を統一
『王女様がどうなっても!新羅(シルラ)がよくなればいいのか?』
『これが 私と王女様がともに歩める唯一の道
私と王女様を繋ぐ たった一つの絆なのだ!』
徳曼(トンマン)を殺せないとミシルに言われ さらに苛立つ美生(ミセン)
『では!公開尋問を行うつもりですか?』
『殺しましょう それしかない!!!』
『その場合 日時と方法が問題になります
暗殺や拷問という手では 我々に大きな負担となる』
美生(ミセン)や夏宗(ハジョン)と違い あくまでも冷静に事を判断するソルォン
ミシルもまた 不機嫌に今の事態を分析する
『徳曼(トンマン)が現れた瞬間…徳曼(トンマン)の生死は私の責任となった!』
『生かせばセジュが生かしたことに』
『殺せばセジュが殺したことになるわけか…』
『だから 捜索途中で殺すべきだった』
ソルォンと世宗(セジョン)のやり取りに ミシルは仏頂面を隠さない
何もかもが思い通りに運ばないことに…
『なぜ王女様が?2人のうち行くべきは春秋(チュンチュ)だろう!』
『王女様の意志だ』
なおも怒りに打ち震える毗曇(ピダム)
ユシンは毗曇(ピダム)に構わず春秋(チュンチュ)に…
『他に手はない 王女様を救うためにも我々は任務を果たすまでだ』
『ご立派だな』
『皮肉を言うな!』
『こいつめ!』
毗曇(ピダム)が再びユシンに殴りかかろうとしているところへ
竹方(チュクパン)が…
『いやぁ… 恐ろしい人たちだ みんな怖すぎますよ
王女様もユシン郎(ラン)もみんなです』
毗曇(ピダム)の矛先は さっきから黙りこくっている春秋(チュンチュ)に向く
『何とか言えよ!』
『……』
『何を考えてるんだ!』
『私もつい先ほど… 決心した 迎えに行く ユシン郎(ラン)!
果たして見せる 与えられた役目を!!! どうする?』
春秋(チュンチュ)に聞かれて もはや毗曇(ピダム)も怒ってばかりいられない
『チクショウ!こうなったらやるしかない!』
『まったく… 徳曼(トンマン)王女はすごいお方だ』
この事態を真平(チンピョン)王とマヤ王妃に報告する万明(マンミョン)夫人
『何だと 徳曼(トンマン)が?』
『何という大胆なことを!』
『自分の身を投げうつとは』
『はい陛下 だから陛下も元気をお出しください 700年続いた神国です
ミシルは強力ですけれど 貴族や花郎(ファラン)たちが
王女様の自己犠牲の念に心動かされるはず』
※神国:新羅(シルラ)の別称
※花郎(ファラン):美しく文武両道に秀でた青年の精鋭集団
『そうだ 元気を出さねばいかんな』
一方 もっともひどい拷問を受け弱っている閼川(アルチョン)とヨンチュン公は
キム・ソヒョンから情報を聞き 心配する
『王女様が?』
『そうらしい』
『王女様がこんな危険な所に』
『ミシルが公開尋問を?』
『様子を見ないと分からん とにかく我々も心を強く持たねば』
『ええ もちろんです』
牢の中でも…
『本当だよ さっき兵が話してた』
『王女様がこの危険な所に自ら?なぜだ!!!』
大風(テプン)と谷使欣(コクサフン)のやり取りに 高島(コド)が…
『たぶん… 俺たちを救いに』
『バカな 我々などを救いに戻られるはずがない』
『戦場でも 時烈(シヨル)を救うために紙を食べたお方だ』
『た…確かにそうだが』
貴族たちは…
『公開尋問を行うべきでは?』
『当然でしょう 陛下の許可を得た逮捕です』
『ええ 行われるでしょうな』
『尋問を行わぬ理由がありません』
昨晩 チュジン公の屋敷では…
「王女様から密書が」
“私は虎に噛まれた腕を抜きはしません 明日 深く押し込みます
そうすれば さらなる反乱をミシルは起こすでしょう
ミシルにとって最大の脅威は チュジン公の兵力です 選択なさってください
ミシルに全兵力を奪われ生き永らえるか 私の力になってくださるか…”
(腕を深く押し込むとは このことだったか…)
花郎(ファラン)たちは…
『公開尋問は当然のご要求です!』
『一国の王女が大罪人の扱いを受けた
すべての事実を明らかにせねば… それが道理でしょう』
『しかも 潔白を証明しに自ら戻られた』
反意を唱えていた朴義(パグィ)さえも…
『王女様の行動には驚いた』
これを受け 不在のユシンに変わり虎才(ホジェ)が…
『では花郎(ファラン)たちの総意はまとまったということだな』
王の寝所インガン殿の前に集う花郎(ファラン)たち
『公開尋問をお開き下さい』
『尋問をお開き下さい』
『尋問を!』
『王女様に罪があるというなら 公開尋問ですべてを明らかにすべきです!』
『神国の花郎(ファラン)は 王女様の公開尋問を要求します!』
『要求します!』
『要求します!』
この騒ぎに驚く夏宗(ハジョン)
ミシルのいない執務室に駆け込んでくる美生(ミセン)
『あの騒ぎは何だ!』
『王女のせいで大変なことになった!!!』
『何ですか?!花郎(ファラン)が陛下に嘆願を?!』
『あれを聞けば分かるだろう!そうだ兵部令(ピョンブリョン)!』
※兵部令(ピョンブリョン):新羅(シルラ)の軍の長官 ここではソルォンのこと
『姉上はどこです 早く決断せねば!』
『簡単ではありません』
『そんな…!』
そこへ 宝宗(ポジョン)が…!
『大変です 陛下が…』
『どうしたのだ』
『花郎(ファラン)たちの声を聞き無理矢理外へ!』
『何と!衛兵は何をしている!!!』
美生(ミセン) ソルォン 夏宗(ハジョン) 宝宗(ポジョン)が慌てて出て行く
事実上 真平(チンピョン)王を軟禁しているのだ
奪った玉璽で今回のことを引き起こしている状況で
真平(チンピョン)王が直接花郎(ファラン)に会うことは あってはならない
『花郎(ファラン)の前で乱暴は出来ません』
『王妃様は?!』
『何とか食い止めました』
真平(チンピョン)王は おぼつかない足取りで花郎(ファラン)の前に現れた
その行く手を阻むチルスク
『お体に障ります』
『そこをどかぬか!』
王に一喝されては 道を開けるしかない
『陛下!』
『花郎(ファラン)たちよ…』
そこでソルォンが素早く真平(チンピョン)王の隣に立つ
『陛下 いけません!』
『放せ!!!』
ソルォンは後ろから手を回し 真平(チンピョン)王の首の後ろの急所を突いた
『陛下!』
『陛下!』
花郎(ファラン)たちから見れば いかにも突然気を失ったかに見える
『中へお運びし 医官を呼べ!』
『陛下!』
真平(チンピョン)王に何も言わせず 花郎(ファラン)の前から運び出せた
そこへ…
『これは何の真似です!!!』
ミシルの登場に 花郎(ファラン)たちは意気消沈して引き下がる
『ご病気の陛下がいらっしゃるインガン殿の前で 何を騒いでいるのです!
陛下のお体より大事なこととは何だ!!!』
『我々は王女様が要求された…』
『公開尋問は行います!』
勇気をもって発言した林宗(イムジョン)の言葉を遮り ミシルが答えた
『はい?』
『兵部令(ピョンブリョン)!
日時を決め花郎(ファラン)や大臣たちにも知らせなさい』
『はい』
ミシルの執務室
『流血の事態は避けたかったが… どうやら無理のようです』
『と言いますと?』
『公開尋問には すべての貴族と臣下が参列するよう書状を送りなさい』
この流れを すでに予測している春秋(チュンチュ)は
ヨムジョンを伴い チュジン公の屋敷を訪ねていた
『公開尋問の参列を促す書状が届くはず きっとその日でしょう』
チュジン公は 深く考え込む様子で黙り込む
さらにミシルの命令は続く
『千名以上の私兵を持つ貴族は 必ず参列させなさい
当日は戒厳令を拡大し 全私兵を兵部(ピョンブ)に帰属させます
その場で帰属令に同意する念書を書かせなさい』
『拒んだら?』
『春秋(チュンチュ)側につくということでしょう 始末なさい』
『はい』
『徐羅伐(ソラボル)一帯は世宗(セジョン)公と美生(ミセン)公の私兵
3000人で警備し 夏宗(ハジョン)が統率を!』
『はい』
※徐羅伐(ソラボル):新羅(シルラ)の首都 現在の慶州(キョンジュ)
『チルスク公は宮殿内の兵の統率を
花郎(ファラン)たちに陛下がおられる宮殿の周囲を警備させなさい』
『はい』
『問題は… チュジン公です』
ミシルはすでに 起こり得る事態を想定していた
春秋(チュンチュ)の説得は 辛抱強く続けられていた
『そのとおりです 明日にでも全ての私兵を差し出さねばミシルは信用しません
兵力を差し出しても 生きてはいけるでしょう
ですが チュジン公から兵力を奪った後…
ミシルにとってチュジン公は 利用価値がありますか』
『では 王女様は私をどうお使いになるのです』
『中小貴族の筆頭として 大貴族を抑えつける先鋒とするでしょう
そして貴公の兵力を 三韓一統を成すために使われるはず』
※三韓一統:高句麗(コグリョ) 百済(ペクチェ) 新羅(シルラ)の三国統一
『強力なミシルに勝てるか お疑いなのでしょう?
勝機をつかむ時は ネズミも虎のようになる
1人で宮殿に戻られた王女様をご覧になりましたね
王女様は ネズミと虎のどちらに見えましたか?』
そこへ チュジン公の息子ピルタンが…
『父上 もうお休みに? ミシルセジュと兵部令(ピョンブリョン)がお見えです』
『わ…分かった 向かいの部屋へ案内を』
顔色が変わる春秋(チュンチュ)とヨムジョン
2人を残し チュジン公は向かいの部屋へ…
『夜分に何のご用です?』
『おかけください 急な上京で お困りのことはないかと心配に』
『久々に息子と暮らせて幸いです
ピルタンに聞きましたが 公開尋問を開くそうですね』
『日にちが決まれば各方面に知らせます』
『そうですか』
ここからはミシル自らが口を開く
『そこでお話があります
当日 王女の反乱軍が動くかもしれません
徐羅伐(ソラボル)一帯の治安が心配です
チュジン公の兵力をお貸しください』
『それでしたら難しいことではありません』
快諾するチュジン公にソルォンが…
『命令状を書いてくだされば
兵部(ピョンブ)の弟監(テガム)を送り 兵を引き受けます』
『全ての兵をお渡ししても 私は構いません ですが…』
※弟監(テガム):新羅(シルラ)の兵部(ピョンブ)の官職
『王女様をどうなさるのです?
兵を動かすには 事前に名分を立てねばなりません
王女様の今の状況は まるで虎の口に腕を深く押し込むようです
私にはまるで先を見通せません』
ミシルの表情が変わった
瞳の奥に 残忍さが滲み出る
『素早く腕を斬ってしまえばよいのです』
『そ…そうですか』
チュジン公の屋敷を出たミシルは…
『チュジン公はソルォン公が始末してください』
『え?』
『徳曼(トンマン)王女が接触しました』
『なぜそれを?』
『先ほどの虎の話は 私が徳曼(トンマン)だけに話したこと
チヌン大帝と私しか知りません』
門前での2人の会話を 春秋(チュンチュ)とヨムジョンが立ち聞きしていた
ミシルが帰った屋敷では ピルタンが父チュジン公に尋ねる
『どんなお話を?』
『上大等(サンデドゥン)の地位とセジュの領地をやるから
全兵力を差し出せと どう思う?』
『以前のセジュは信用できました
どんな無理な約束も 必ず守られた方です』
『それで?』
『ですが花郎(ファラン)たちは 皆 混乱しています
ソヒョン公たちを酔わせ 和白(ファベク)会議の参加を邪魔したり
セジュはご自身を裏切っています 何かに追われるように…』
※和白(ファベク)会議:新羅(シルラ)の貴族会議
そこへ 下男が上仙(サンソン)虎才(ホジェ)公からの伝言を持って来る
伝言の指示通りの場所に行くピルタン
そこには 他の花郎(ファラン)たちはもちろん 虎才(ホジェ)自身も来ている
※上仙(サンソン):風月主(プンウォルチュ)を務めた花郎(ファラン)
『ご用は?』
『上仙(サンソン)も我々からの文を受け取ったそうだ』
林宗(イムジョン)の言葉に驚くピルタン
『そなたも私の文を?』
『はい では…』
誰かが偽の文で皆を呼び出したことになる
戸惑う一同のもとに現れたのは キム・ユシンと毗曇(ピダム)だ…!
その頃 春秋(チュンチュ)とヨムジョンは 復耶会の砦に戻っていた
月夜(ウォルヤ)と雪地(ソルチ)が出迎える
『押梁州(アンニャンジュ)の兵力は?』
『都の外に隠密に配置し 精鋭兵は別の場所に』
『世宗(セジョン)公と美生(ミセン)公の私兵が
徐羅伐(ソラボル)一帯を守るはず 兵部(ピョンブ)の兵力は宮殿を』
『数ではかなわない 手分けして少数での襲撃を繰り返します』
『絶対に私兵たちが宮殿に合流できないように』
『はい ご心配なく 遺民になって以来 訓練してきた者たちです』
『ユシン郎(ラン)と毗曇(ピダム)はどこに? 当日 一番重要な役だ』
2人は 虎才(ホジェ)はじめ花郎(ファラン)たちと別れ帰るところだった
『花郎(ファラン)たちが敵側につかないだけでもいいか』
『いや 味方につける』
『できるのか?』
『国仙(ククソン)さえいれば大丈夫だ』
※国仙(ククソン):花郎(ファラン)の総指導者
毗曇(ピダム)が歩みを止める
自分と戦っている時に 国仙(ククソン)ムンノが死亡したことは
徳曼(トンマン)にすら言っていないことだった
『国仙(ククソン)なら我々の側につき 花郎(ファラン)たちも従うはず
ムンノ公の居場所を知っているだろう?』
『…知らない 行き先を告げて出かけるようなお方じゃない』
『では捜せ!』
『……』
『道端の石にでも助けを求めねば 王女様が死ぬ! 本当に知らないのか!』
自分の動揺を隠すように 強気に出る毗曇(ピダム)
『勝手に王女様を行かせカッコつけといて!今さら何だよ!!! …帰ろう』
『当日までに方法を考えねば』
考え込むユシンを見て 毗曇(ピダム)覚悟を決めたように口を開く
『方法なら… ある』
毗曇(ピダム)はユシンと別れ 1人ムンノの墓に来た
墓の前にひざまずき 神妙な表情に…
(昔 宮殿を去った時も “国仙(ククソン)は仙人になった” と世間は言った
国仙(ククソン)には それがふさわしい 国仙(ククソン)は… 死にません
師匠 師匠はこのまま 永遠に生き続けてください)
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