善徳女王 49話#2 勅書

『この状況を早く何とかしなくては!
このままでは ミシルのいる所が徐羅伐(ソラボル)に!!!』

何とか対策を立てようとしている徳曼(トンマン)

そこへ 毗曇(ピダム)が1人の兵士を捕らえてくる

『この者は?』

『冠文県の兵です 大耶(テヤ)城から出て来ました 報告に行ったそうです』
『私は命令に従っただけです!』
『なぜ大耶(テヤ)城に報告を?』
『土城建設はセジュの管轄ゆえ
報告は大耶(テヤ)城にしろと冠文県の城主が…』

兵士の言い訳に補足するヨムジョン

『材木が焼失したので 予算の増額をとの内容です』

『私は命令された通りに動いただけです! 命だけはお助けを…』

(ミシルの存在が これほどまでに大きいとは)

『今すぐ便殿会議を開く』

『はい』

家臣たちを集め 徳曼(トンマン)は初めての便殿会議を開いた

『これまでのことは不問に付します

しかし今後 国政に関する報告を私以外の者に伝達した者は
誰であろうと打ち首にします』

これまでにない徳曼(トンマン)の厳しい言葉に 緊張が走る

『すべての上書や 地方からの知らせも同様です

徐羅伐(ソラボル)へ上書を届けぬ者や 他の場所へ届ける地方の部署は
厳罰に処すると通達せよ』
『はい 王女様』
『また これより兵部(ピョンブ)は居列州(コヨルチュ)大伽耶(テガヤ)
推火(チュファ)郡など 大耶(テヤ)城周辺の全城門と役所の掌握を』
『はい!』
『大耶(テヤ)城へ行く上書を止めます
ミシルがいる大耶(テヤ)城を完全に孤立させるのです 分かりましたか』
『はい』

会議が終わり 徳曼(トンマン)は 亡き昭火(ソファ)の言葉を思い返す

「陛下は私に玉璽を託され 宮殿の外へ持ち出せと

でも途中でチルスクに出くわし 奪われてしまいました
その後 ミシルの宮殿の地下に閉じ込められ…」
「それで?」
「これを見つけました」

それは正に ミシルが脱出する時になくなったと気づき焦っていたものだった

その書状を開き 驚く徳曼(トンマン)

“ミシルを殺害し 大義を立てよ”

「これはチヌン大帝が…」

「はい 花郎(ファラン)ソルォンに下した命令です
おそらく チヌン大帝が亡くなる前に出されたものかと」

(あれを使わねばならぬのか)

そこへ毗曇(ピダム)が…

『王女様 何をお悩みですか』

『……』
『私が力になれることはありませんか』

毗曇(ピダム)を見つめる徳曼(トンマン)

『私は あまり役に立っていないようで…』

『お前の助けなしでは これまでの苦境を乗り越えられなかった
役に立たぬなど とんでもない』
『……』
『それに もう少しして状況が落ち着いたら お前に重職を与えるつもりだ』
『重職というと?』
『お前たちの情報網と組織を体系的に活用すべく
秘密部署を設けようと思う お前にしか任せられぬ役割だ
お前になら どんな極秘事項も信じて任せることができる』

毗曇(ピダム)は 白い歯を見せて満面の笑みを浮かべる

『時々 子供のようになる そんなに嬉しいか?』

『王女様が私を信じて下さるから』
『最初の極秘任務を与える』
『お申し付けください』
『宮殿へ来る途中 復耶会の砦の木の下に 小箱を埋めてきた』
『箱ですか?』
『取って来てくれ 誰にも気づかれずに』
『はい 承知しました』

毗曇(ピダム)が去るのと入れ違いに キム・ユシンと閼川(アルチョン)が…

『ご命令通り 通達を出しました』

『ご苦労でした』
『ミシルの影響力は想像以上です』
『我々はミシルたちとは違い 国を治めた経験がありません
今 我々に最も必要なのは人材です
どんな才覚の持ち主も 1人では何もできません 多くの人の助けが必要です
自分の力となってくれる人材が…
だからミシルも 優秀な人物にこだわり 自分の味方に引き入れていたのです
私も ミシルのようにならなくては ミシルから人を奪うのです』

怪訝な表情になるキム・ユシン

『それは どういうことですか?』

『母さんが 贈り物を残してくれました
あれだけは使いたくなかったが… 使う時が来ました』
『一体 何なのですか?』

口に出すのをためらう徳曼(トンマン)

『毗曇(ピダム)に取りに行かせました』

閼川(アルチョン)が聞く

『毗曇(ピダム)がその任務に当たっているなら大耶(テヤ)城周辺の偵察は?』
『毗曇(ピダム)が戻ってくるまで 侍衛府(シウィブ)が務めてください』
『承知しました』

※侍衛府(シウィブ):近衛隊

徳曼(トンマン)の話した場所に 言った通りの小箱が埋めてあった

さっそく持ち帰ろうとして 毗曇(ピダム)は好奇心から箱を開けてみる
すると 見覚えのある赤い書状が出てきた
それはミシルのもとから逃げてきた昭火(ソファ)が
片時も離そうとしなかったものだった
ということは ミシルから奪って来たものなのか…?
書状を開いた毗曇(ピダム)は 驚きのあまり座り込む

それは チヌン大帝がソルォンに宛てた“勅書”だったのだ

任務を果たして戻る毗曇(ピダム)を じっと待つ徳曼(トンマン)

座り込んだまま考え込む毗曇(ピダム

その頃 竹方(チュクパン)と高島(コド)

大風(テプン)と谷使欣(コクサフン)の4人は
変装し 大耶(テヤ)城に潜入していた

『王女様と出会った時も僧侶の服を?』

『これで人をだましてた 詐欺もよくやったな』
『大郎頭(テナンドゥ)が悪事を認めるとは珍しい』
『最近は人生がはかなく思えて』
『ウッヒャッヒャ…兄貴が人生ははかないって?』

高島(コド)の額を叩いてから 竹方(チュクパン)は大真面目に…

『おい大風(テプン) 俺たちは今 敵の偵察に向かっている

大郎頭(テナンドゥ)と呼ぶとは何事だ』
『あ…』
『気をつけろ』
『分かりました』

夕暮れになっても 毗曇(ピダム)は座り込んだままだった

(チヌン大帝は ミシルを殺そうとしたのか

だったらなぜ こんなものが残っている
ミシルはなぜ これを処分しなかった 一体 なぜなんだ…)

とうとう夜になり 毗曇(ピダム)が向かう先は…

『次の者!その荷物は?』

『高麗人参です』
『次の者!どこから?』
『ヤンジ村です』
『夜中にどこへ?』
『家に帰ります』

大耶(テヤ)城の門前で門番に調べられる列の中に

竹方(チュクパン)たちが並んでいる
すると竹方(チュクパン)が 列の前に方にいる毗曇(ピダム)を発見する…!

『次の者!入城の目的は?』

『商団の用事です』

(なぜ毗曇郎(ピダムラン)がここに?)

(妙だな 代わりに俺たちが来たのに)
(王女様のお使いに行ったはずでは?)

竹方(チュクパン)は ふと昭火(ソファ)のことを思い出す

秘密の通路を探して地下を歩き回っていた竹方(チュクパン)は
ミシルの隠し部屋にいた昭火(ソファ)を見つけ 一緒に脱出した
昭火(ソファ)は 大事そうに抱えた赤い書状を片時も離さなかった

「それ…大事なら毗曇郎(ピダムラン)に預けてはどうですか

あの人なら誰にも奪われません」
「ピ…毗曇郎(ピダムラン)には預けられません」
「ミシルに勝てる切り札なのでしょう?」
「だからです 毗曇郎(ピダムラン)とも関係がある物なのです」

城内に忍び込んだ毗曇(ピダム)は 兵士を2人殺し 
ミシルの前に…!
立った今振り下ろした血染めの剣を ミシルののど元に突きつける

『なぜここに?徳曼(トンマン)に暗殺を命じられたか』

『……』
『あるいは恋い慕う女のため 手柄を立てに来たか』
『聞きたいことが』
『聞きたいこと?』
『なぜ… 一体なぜ…!』

胸元から勅書を取り出そうとして 毗曇(ピダム)はやめた

『なぜ…なぜヨムジョンに 俺を遊山に連れ出せと? 答えてください』

『……』
『答えろ!!!』
『……お前が邪魔だからだ』
『邪魔だと?!!!』

不敵な笑みを浮かべるミシル

憎しみのこもった視線で睨みつける毗曇(ピダム)

『あんたの壮大な夢をかなえるためにか』

『そういうことだ』
『俺はいつも 邪魔者なんだな あんたが夢をかなえるには…』

じっと前を見つめ 毗曇(ピダム)を見ようとしないミシル

毗曇(ピダム)の顔は悲しみにゆがむ

『だったら なぜ捨てなかった 殺すべきだったんじゃないか』

『そうだ あれは失敗だった そのために今 こんな目に遭っている』
『失敗だと?失敗? 失敗とは… それならなぜ なぜ…』

今こそ勅書を叩きつけようとしたその時 殺された兵士が発見されたのか

外が騒がしくなり 突然 美生(ミセン)と宝宗(ポジョン)が入ってくる
ミシルに剣を突きつけている毗曇(ピダム)に驚き
その毗曇(ピダム)に剣を突きつける宝宗(ポジョン)

『剣を下ろして 私を訪ねてきた客人だ』

ミシルにそう言われては 剣を下ろすしかない宝宗(ポジョン)

毗曇(ピダム)はかえってうろたえてしまう

『行くがいい』

『しかし 姉上…』
『早く』

勅書を胸にしまったまま 毗曇(ピダム)は去るしかなかった

この報告を聞き 世宗(セジョン)と夏宗(ハジョン)は憤る

『何だと 毗曇(ピダム)が?』

『あいつは何者なんだ!なぜ母上はいつも…!!!』
『ソルォン公は 何かご存じなのでは?』
『いいえ』

美生(ミセン)の問いに短く答えるソルォン

夏宗(ハジョン)が苛つく

『何か知っているなら教えて下さい!あいつのせいで我々はこんな目に!』

『そのとおりです 毗曇(ピダム)を殺さなかったのは母上らしくない』

ソルォンは ミシルのもとへ…

『セジュ 毗曇(ピダム)はなぜここへ?』

『……』
『セジュ』
『毗曇(ピダム)が宮殿から王女を脱出させた日 皆が抱いた疑問…
毗曇(ピダム)もその答えを知りたがっていました
なぜ自分を殺さず生かしておいたのか』

その頃 宮殿に戻った竹方(チュクパン)たちから

報告を受けるユシンと閼川(アルチョン)

『大耶(テヤ)城で毗曇(ピダム)を見た?』

『はい 城内に潜入するところを この目でしかと見ました』
『王女様の使いで重要な物を取りに行ったはず なぜ大耶(テヤ)城に…』

毗曇(ピダム)は 今だ徐羅伐(ソラボル)には向かわず 悩んでいた

ユシンは 竹方(チュクパン)たちから聞いたことを徳曼(トンマン)に報告する

『毗曇(ピダム)が大耶(テヤ)城に?』

『城内に潜入したそうです 毗曇(ピダム)に何を取りに行かせたのです?』
『……』
『大耶(テヤ)城にはミシルがいます あいつは以前もミシルと遊山に…』
『ユシン郎(ラン)
『分かっています 疑ってかかってはいけませんね すみません』

執務室を出る2人

するとそこに 竹方(チュクパン)が1人で立っている

『どうした』

『いえ その… 王女様に折り入ってお話したいことが』

ユシンが立ち去り 2人になる徳曼(トンマン)と竹方(チュクパン)

『何ですか』

『その…乳母殿がこんな話を
“ミシルの部屋から持ち出した物は 毗曇郎(ピダムラン)と関係がある
だから毗曇郎(ピダムラン)には預けられない” と
何か 人に言えない秘密でもあるようでした そのことが気にかかって…』

徳曼(トンマン)は激しく動揺し 
執務室でひとり考え込む

(ミシルの殺害を命じる勅書が なぜ毗曇(ピダム)と…)

そこへ 毗曇(ピダム)が戻ってきた

その手に 小箱はない

『頼んだ物は持って来たか』

『……』
『渡してくれ
『…ありませんでした』
『……』
『木の下を掘ってみましたが箱だけで 中には何も』

じっと毗曇(ピダム)を見つめる徳曼(トンマン)

毗曇(ピダム)もまた 徳曼(トンマン)を見据えた

『私は 今からお前の言うことを信じる

それが今後 私たちの関係の土台となる』
『……』
『本当に 何もなかったのか』
『……はい 本当にありませんでした』
『お前がなくしたのでは?』
『いいえ』
『では大耶(テヤ)城に行ったのは本当か』

チラチラと視線が動き 明らかに動揺している毗曇(ピダム)

『ミシルに会ったのか』

『はい 手ぶらで戻るのがイヤで ミシルを暗殺しようとしました』

思いがけない答えに驚く徳曼(トンマン)

『ミシルさえ死ねばすべてが終わると思い… ですが失敗しました』

『最後に聞く』

その言葉に ずっと視線を外していた毗曇(ピダム)が徳曼(トンマン)を見る

『お前と ミシルは …どんな関係だ』

『……』

同じ時 美生(ミセン) 世宗(セジョン) 夏宗(ハジョン)がそろい

ミシルに詰め寄っていた

『これは 我々の生死にかかわる重大な問題です』

『そうですよ 母上!』
『セジュと毗曇(ピダム)との関係は?』
『息子です』

あっさりと答えるミシルに 仰天する3人

毗曇(ピダム)もまた…

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