善徳女王 57話#2 ユシンの策
朴義(パグィ)たちの前に 遊軍が現れた
キム・ユシンの指示通り 朴義(パグィ)たちは退却し
泥道に誘い込み ファヨン峰に抜け
待機していたユシン 林宗(イムジョン)と合流する
『どうなった?』
『途中で追撃をあきらめ 姿を消しました』
『消えたのか』
『気づかれたのでは?』
『もしや山道を迂回して…』
そこへ 赤い兜を先頭に 遊軍が現れる…!
ユシンは その遊軍の姿にハッとする
『全員 退却せよ!』
一旦 本陣に戻ったユシン軍は あらためて作戦会議を開く
『1日に8里ではなく 9里の速さです』
『このままでは 戦術は立てられません』
『遊軍が神出鬼没ゆえ 本陣を攻められません 手をこまねいていても…』
『……』
『上将軍(サンジャングン)!』
『朴義(パグィ)はまだか』
何も言わないユシンに 月夜(ウォルヤ)は苛立つ
百済(ペクチェ)軍 ケベクの陣営では…
赤兜を片手に抱えた将軍が帰還していた
『あの密偵がユシンだったとは』
『そなたたちも見たか』
『私も驚きました 上将軍(サンジャングン)自ら敵陣へ潜入するとは』
『ユシンを捕らえ 押梁州(アンニャンジュ)を突破すれば
徐羅伐(ソラボル)は目の前だ
新羅(シルラ)の王はまだ徐羅伐(ソラボル)に?』
『今のところは』
『女の割には度胸がある』
『ユシン軍とは いつ決着をつけるのですか』
『日に9里の速さの秘密が解けぬ限り 連中は混乱したままだ
次の戦いでは 日に10里を見せてやる
ユシンと決着をつけるのは その後だ』
新羅(シルラ)の陣営に 朴義(パグィ)が戻ってきた
『確認したか』
『敵は間違いなく泥道を通りました』
『泥道を?』
ユシンと朴義(パグィ)が 何を確認し合っているのか
月夜(ウォルヤ)には さっぱり分からない
『泥まみれだったか?』
『はい この目で見ました』
『そうか』
『どういうことです?』
林宗(イムジョン)にも 何が何だか分からない
ユシンは 再び現れた遊軍の姿を思い返す
(確かに 泥はついていなかった)
『は! 何と… こんな小細工にひっかかっていたとは』
『上将軍(サンジャングン) 何の話ですか』
『今すぐ軍事会議を開く!皆を集めよ』
すでにユシンが すべてを見破ったとも知らず
ケベク将軍は余裕の表情でいる
同じ赤兜を持った人物を迎えて…
『これは誰かと思ったら 遊軍を率いる鬼神ケベク将軍でしたか』
『ハッハッハ…からかわないでください将軍! アッハッハ…』
新羅(シルラ)の陣営 軍事会議
『遊軍が2つあると そういうのですか』
『ええ 2つの部隊を1つに見せかけ
日に9里の騎兵という幻想を作り上げていたのです
速度が予測できぬために作戦を立てられず
兵は恐怖に震え 士気が落ちたのです しかし すべてまやかしです』
『何てことだ…』
『信じられん!そんな手に…』
『あり得ないと思っていたが こんな手に騙されたとは』
こんなにも簡単な小細工に踊らされていた悔しさに 皆 憤慨する
『泥道へおびき寄せたのは このためだったのですね』
『これより我々は 百済(ペクチェ)軍の本陣を攻撃する!
チュジン公 敵の補給路を断った後 本陣を攻めてください』
『しかし 遊軍が2つあるなら 片方はこの地点に潜んでいるのでは?』
『その遊軍は動きません』
『え?』
『片方の部隊が動いている間は動かない
そうしなれば 遊軍が2つだとばれるからです
秘密を知られたと気づくまで 動かないでしょう』
『なるほど そうですな』
『これより 本物の遊軍を捕らえる! 林宗(イムジョン)そなたは私の役を』
『え?』
『月夜(ウォルヤ) そなたたちの出番だ』
『準備はできております!』
夜の庭園に佇む善徳(ソンドク)女王
そこへ 毗曇(ピダム)が…
『決心なさいましたか 避難を』
『ある日 すべてが変わった』
『……』
『ある者は王女の私の命を狙い ある者は私を守って目の前で死んだ
他の者たちは私にひざまずき 頭を下げ 敬語を使い 大業を遂げよと迫った
そんなある日 お前が現れた
お前は何も気にせずに私にぞんざいな口を 私もそれでいいと言った
お前だけは特別扱いしなかった だから お前といると心が安らいだ
宮殿へ入ってからも お前は私に花をくれ
心配そうな目で見つめ 手を握ってくれた
計算であっても構わぬ お前といると 昔の私に戻ることができ嬉しかった』
善徳(ソンドク)女王の心が見えて 毗曇(ピダム)は嬉しかった
そして 切ないまなざしで聞く
『ならばなぜ 変わられたのです』
『私には 名がないからだ
太子にも 王女にも 町のゴロツキにも名があるのに 王には名がない
私はただ 陛下と呼ばれる もう誰も私の名を呼べない』
『私がお呼びします』
『私の名を呼ぶのは 反逆行為だ』
『……』
『お前が恋心から私の名を呼んでも 反逆者と見なされる なぜ変わったか?
名を失った時から お前は勢力を持つ臣下の1人であるべきだから
私はお前の考えを探り 疑う 王であるべきだから』
『……』
『お前が ミシルのようにならぬかと いつも警戒し 疑わねばならないから』
善徳(ソンドク)女王の頬を涙がつたう
『だが毗曇(ピダム) それが…どれほどつらいか…分かるか?』
静かに善徳(ソンドク)女王の肩に触れ 引き寄せ 振り向かせる
泣き顔のまま 毗曇(ピダム)を見つめる善徳(ソンドク)女王
『私がどれだけお前を信じたいか… 頼りにしたいか… お前に分かるか』
あれほど知りたかった善徳(ソンドク)女王の本心
しかし 知るほどに切なく 耐えがたく 毗曇(ピダム)はその場を離れた
ミシルの祭壇の前に立つ毗曇(ピダム)
善徳(ソンドク)女王が 後を追いかけ 再び毗曇(ピダム)の前に立つ
『陛下』
『お前が必要だ 私を急き立てて孤独にさせる者たちでなく
私を見つめ 花を差し出し 軽口を叩き 震える手を握る…
毗曇(ピダム) お前が必要だ』
『……』
『ずっと抑えつけていた 必死で堪えていた
皆が 王がこんな感情を持ってはならぬと言うから』
『陛下』
『お前だけが 私を人として 女として扱う 私はそれが嬉しい
私を女として好いてくれる お前が好きだ
こんな気持ちを… 持っていいのか…』
毗曇(ピダム)は 何も言わず ただそっと善徳(ソンドク)女王を抱き寄せた
切なく恥らいながら 善徳(ソンドク)女王は その背中に手を添えた…
毗曇(ピダム)に対し本心を見せながらも
女王としての威厳に満ちて便殿会議に臨む善徳(ソンドク)女王
『神国の危機を打開すべく 王命を下す
上大等(サンデドゥン)ヨンチュンを罷免し
毗曇(ピダム)を上大等(サンデドゥン)に任命する』
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
『戦が終結するまで チュジン公 スウルブ公 虎才(ホジェ)公 ワンニュン公
ソニョル公の私兵を 上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)の指揮下に
私は 上大等(サンデドゥン)と徐羅伐(ソラボル)に残り
兵の士気を鼓舞し 神国を守る』
毗曇(ピダム)本人の驚きはもちろんのこと
突然罷免されたヨンチュン公をはじめ 一同が衝撃を受けた
会議後 善徳(ソンドク)女王は ヨンチュン公と向き合う
『申し訳ないと思っています』
『いいえ 今は戦時体制を整えることが何より重要です』
『ええ 我々には兵力が足りません』
『毗曇(ピダム)公の指揮下に入るなら 貴族たちも私兵を差し出すでしょう』
『ご理解に感謝します』
同席している金春秋(キム・チュンチュ)は 複雑な表情のままだ
『陛下は 毗曇(ピダム)を信じているのですか』
『ああ 信じている』
失望と怒りで 春秋(チュンチュ)は下を向く
『毗曇(ピダム) ユシン そして春秋(チュンチュ) 皆の力を信じる
私は 毗曇(ピダム)もユシンも そのどちらも手放す気はない』
『……』
『人を得て捨てることは 国を得て捨てることと同じくらい重く考えよ
情勢を見極める前に 味方にすることを考えよ』
ミシルの一族にとっては朗報ではあったが あまりのことに
夏宗(ハジョン)さえ浮足立っている
『あの毗曇(ピダム)が上大等(サンデドゥン)になるとは… は!』
『陛下の絶妙な策だ』
『絶妙な策?』
美生(ミセン)の穿った味方に注目する一同
『毗曇(ピダム)の不安を解消するため
上大等(サンデドゥン)に任じ 貴族の私兵まで与えた』
『同時に 貴族たちの勢力を牽制することもできます』
『そのとおり』
美生(ミセン)動揺 ヨムジョンもすでに見破っていた
『一石二鳥ですね』
『毗曇(ピダム)も恐ろしい奴だが 陛下はそれ以上だ ハハハ…』
一方 私兵を差し出せと言われた貴族たちは 虎才(ホジェ)のもとに集う
『陛下の命令通り 私兵を差し出すべきでしょうか』
『戦の最中ゆえ 命令は絶対です』
『だが毗曇(ピダム)公の指揮下に置くとは…』
『上大等(サンデドゥン)になったのだから問題はないのでは?』
『ひとまず命令に従い 様子を見ましょう』
毗曇(ピダム)はひとり ミシルの祭壇の前にいた
(母上 “国を得て人を得ようとしてはならぬ 愛は奪い取るもの”
とおっしゃいましたね そんな生き方はやめます
奪うのではなく 与え 得るのではなく 捨て あの方と一緒に生きます
王座も 千年 名を残すことも あの方の涙の前ではつまらぬものです)
百済(ペクチェ)軍 ケベクの陣営では作戦の最終確認が行われていた
『この谷を通るとなると 退路は1つだけです』
『その退路に弓部隊でも潜んでいたら大変です』
『地形から考えて 待ち伏せが可能なのはこの地点だけだが
この距離では我々に敵の矢は届かぬ 問題ない
これより 押梁州(アンニャンジュ)の防御線を突破し ユシンを捕らえる!』
ユシン軍と対峙する遊軍
その赤兜の正体は ケベク将軍の影武者であった
ユシンの鎧を身にまとった林宗(イムジョン)を ユシンだと思い込み
退却しながら ユシン軍を誘い込む作戦だ
林宗(イムジョン)は すべてを承知しながら ユシンとして敵を追撃する…!
ケベク将軍本人は 同じ時 新羅(シルラ)の本陣を襲撃すべく進軍していた
夜の闇に紛れ 本陣に総攻撃をかけるケベク
しかし 本陣はもぬけの殻だった
当惑する間もなく 一斉に火矢が打ち込まれる…!!!
闇の中から躍り出たキム・ユシンが叫ぶ
『百済(ペクチェ)軍を壊滅させよーーーっ!!!』
キム・ユシンの指示通り 朴義(パグィ)たちは退却し
泥道に誘い込み ファヨン峰に抜け
待機していたユシン 林宗(イムジョン)と合流する
『どうなった?』
『途中で追撃をあきらめ 姿を消しました』
『消えたのか』
『気づかれたのでは?』
『もしや山道を迂回して…』
そこへ 赤い兜を先頭に 遊軍が現れる…!
ユシンは その遊軍の姿にハッとする
『全員 退却せよ!』
一旦 本陣に戻ったユシン軍は あらためて作戦会議を開く
『1日に8里ではなく 9里の速さです』
『このままでは 戦術は立てられません』
『遊軍が神出鬼没ゆえ 本陣を攻められません 手をこまねいていても…』
『……』
『上将軍(サンジャングン)!』
『朴義(パグィ)はまだか』
何も言わないユシンに 月夜(ウォルヤ)は苛立つ
百済(ペクチェ)軍 ケベクの陣営では…
赤兜を片手に抱えた将軍が帰還していた
『あの密偵がユシンだったとは』
『そなたたちも見たか』
『私も驚きました 上将軍(サンジャングン)自ら敵陣へ潜入するとは』
『ユシンを捕らえ 押梁州(アンニャンジュ)を突破すれば
徐羅伐(ソラボル)は目の前だ
新羅(シルラ)の王はまだ徐羅伐(ソラボル)に?』
『今のところは』
『女の割には度胸がある』
『ユシン軍とは いつ決着をつけるのですか』
『日に9里の速さの秘密が解けぬ限り 連中は混乱したままだ
次の戦いでは 日に10里を見せてやる
ユシンと決着をつけるのは その後だ』
新羅(シルラ)の陣営に 朴義(パグィ)が戻ってきた
『確認したか』
『敵は間違いなく泥道を通りました』
『泥道を?』
ユシンと朴義(パグィ)が 何を確認し合っているのか
月夜(ウォルヤ)には さっぱり分からない
『泥まみれだったか?』
『はい この目で見ました』
『そうか』
『どういうことです?』
林宗(イムジョン)にも 何が何だか分からない
ユシンは 再び現れた遊軍の姿を思い返す
(確かに 泥はついていなかった)
『は! 何と… こんな小細工にひっかかっていたとは』
『上将軍(サンジャングン) 何の話ですか』
『今すぐ軍事会議を開く!皆を集めよ』
すでにユシンが すべてを見破ったとも知らず
ケベク将軍は余裕の表情でいる
同じ赤兜を持った人物を迎えて…
『これは誰かと思ったら 遊軍を率いる鬼神ケベク将軍でしたか』
『ハッハッハ…からかわないでください将軍! アッハッハ…』
新羅(シルラ)の陣営 軍事会議
『遊軍が2つあると そういうのですか』
『ええ 2つの部隊を1つに見せかけ
日に9里の騎兵という幻想を作り上げていたのです
速度が予測できぬために作戦を立てられず
兵は恐怖に震え 士気が落ちたのです しかし すべてまやかしです』
『何てことだ…』
『信じられん!そんな手に…』
『あり得ないと思っていたが こんな手に騙されたとは』
こんなにも簡単な小細工に踊らされていた悔しさに 皆 憤慨する
『泥道へおびき寄せたのは このためだったのですね』
『これより我々は 百済(ペクチェ)軍の本陣を攻撃する!
チュジン公 敵の補給路を断った後 本陣を攻めてください』
『しかし 遊軍が2つあるなら 片方はこの地点に潜んでいるのでは?』
『その遊軍は動きません』
『え?』
『片方の部隊が動いている間は動かない
そうしなれば 遊軍が2つだとばれるからです
秘密を知られたと気づくまで 動かないでしょう』
『なるほど そうですな』
『これより 本物の遊軍を捕らえる! 林宗(イムジョン)そなたは私の役を』
『え?』
『月夜(ウォルヤ) そなたたちの出番だ』
『準備はできております!』
夜の庭園に佇む善徳(ソンドク)女王
そこへ 毗曇(ピダム)が…
『決心なさいましたか 避難を』
『ある日 すべてが変わった』
『……』
『ある者は王女の私の命を狙い ある者は私を守って目の前で死んだ
他の者たちは私にひざまずき 頭を下げ 敬語を使い 大業を遂げよと迫った
そんなある日 お前が現れた
お前は何も気にせずに私にぞんざいな口を 私もそれでいいと言った
お前だけは特別扱いしなかった だから お前といると心が安らいだ
宮殿へ入ってからも お前は私に花をくれ
心配そうな目で見つめ 手を握ってくれた
計算であっても構わぬ お前といると 昔の私に戻ることができ嬉しかった』
善徳(ソンドク)女王の心が見えて 毗曇(ピダム)は嬉しかった
そして 切ないまなざしで聞く
『ならばなぜ 変わられたのです』
『私には 名がないからだ
太子にも 王女にも 町のゴロツキにも名があるのに 王には名がない
私はただ 陛下と呼ばれる もう誰も私の名を呼べない』
『私がお呼びします』
『私の名を呼ぶのは 反逆行為だ』
『……』
『お前が恋心から私の名を呼んでも 反逆者と見なされる なぜ変わったか?
名を失った時から お前は勢力を持つ臣下の1人であるべきだから
私はお前の考えを探り 疑う 王であるべきだから』
『……』
『お前が ミシルのようにならぬかと いつも警戒し 疑わねばならないから』
善徳(ソンドク)女王の頬を涙がつたう
『だが毗曇(ピダム) それが…どれほどつらいか…分かるか?』
静かに善徳(ソンドク)女王の肩に触れ 引き寄せ 振り向かせる
泣き顔のまま 毗曇(ピダム)を見つめる善徳(ソンドク)女王
『私がどれだけお前を信じたいか… 頼りにしたいか… お前に分かるか』
あれほど知りたかった善徳(ソンドク)女王の本心
しかし 知るほどに切なく 耐えがたく 毗曇(ピダム)はその場を離れた
ミシルの祭壇の前に立つ毗曇(ピダム)
善徳(ソンドク)女王が 後を追いかけ 再び毗曇(ピダム)の前に立つ
『陛下』
『お前が必要だ 私を急き立てて孤独にさせる者たちでなく
私を見つめ 花を差し出し 軽口を叩き 震える手を握る…
毗曇(ピダム) お前が必要だ』
『……』
『ずっと抑えつけていた 必死で堪えていた
皆が 王がこんな感情を持ってはならぬと言うから』
『陛下』
『お前だけが 私を人として 女として扱う 私はそれが嬉しい
私を女として好いてくれる お前が好きだ
こんな気持ちを… 持っていいのか…』
毗曇(ピダム)は 何も言わず ただそっと善徳(ソンドク)女王を抱き寄せた
切なく恥らいながら 善徳(ソンドク)女王は その背中に手を添えた…
毗曇(ピダム)に対し本心を見せながらも
女王としての威厳に満ちて便殿会議に臨む善徳(ソンドク)女王
『神国の危機を打開すべく 王命を下す
上大等(サンデドゥン)ヨンチュンを罷免し
毗曇(ピダム)を上大等(サンデドゥン)に任命する』
※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理
『戦が終結するまで チュジン公 スウルブ公 虎才(ホジェ)公 ワンニュン公
ソニョル公の私兵を 上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)の指揮下に
私は 上大等(サンデドゥン)と徐羅伐(ソラボル)に残り
兵の士気を鼓舞し 神国を守る』
毗曇(ピダム)本人の驚きはもちろんのこと
突然罷免されたヨンチュン公をはじめ 一同が衝撃を受けた
会議後 善徳(ソンドク)女王は ヨンチュン公と向き合う
『申し訳ないと思っています』
『いいえ 今は戦時体制を整えることが何より重要です』
『ええ 我々には兵力が足りません』
『毗曇(ピダム)公の指揮下に入るなら 貴族たちも私兵を差し出すでしょう』
『ご理解に感謝します』
同席している金春秋(キム・チュンチュ)は 複雑な表情のままだ
『陛下は 毗曇(ピダム)を信じているのですか』
『ああ 信じている』
失望と怒りで 春秋(チュンチュ)は下を向く
『毗曇(ピダム) ユシン そして春秋(チュンチュ) 皆の力を信じる
私は 毗曇(ピダム)もユシンも そのどちらも手放す気はない』
『……』
『人を得て捨てることは 国を得て捨てることと同じくらい重く考えよ
情勢を見極める前に 味方にすることを考えよ』
ミシルの一族にとっては朗報ではあったが あまりのことに
夏宗(ハジョン)さえ浮足立っている
『あの毗曇(ピダム)が上大等(サンデドゥン)になるとは… は!』
『陛下の絶妙な策だ』
『絶妙な策?』
美生(ミセン)の穿った味方に注目する一同
『毗曇(ピダム)の不安を解消するため
上大等(サンデドゥン)に任じ 貴族の私兵まで与えた』
『同時に 貴族たちの勢力を牽制することもできます』
『そのとおり』
美生(ミセン)動揺 ヨムジョンもすでに見破っていた
『一石二鳥ですね』
『毗曇(ピダム)も恐ろしい奴だが 陛下はそれ以上だ ハハハ…』
一方 私兵を差し出せと言われた貴族たちは 虎才(ホジェ)のもとに集う
『陛下の命令通り 私兵を差し出すべきでしょうか』
『戦の最中ゆえ 命令は絶対です』
『だが毗曇(ピダム)公の指揮下に置くとは…』
『上大等(サンデドゥン)になったのだから問題はないのでは?』
『ひとまず命令に従い 様子を見ましょう』
毗曇(ピダム)はひとり ミシルの祭壇の前にいた
(母上 “国を得て人を得ようとしてはならぬ 愛は奪い取るもの”
とおっしゃいましたね そんな生き方はやめます
奪うのではなく 与え 得るのではなく 捨て あの方と一緒に生きます
王座も 千年 名を残すことも あの方の涙の前ではつまらぬものです)
百済(ペクチェ)軍 ケベクの陣営では作戦の最終確認が行われていた
『この谷を通るとなると 退路は1つだけです』
『その退路に弓部隊でも潜んでいたら大変です』
『地形から考えて 待ち伏せが可能なのはこの地点だけだが
この距離では我々に敵の矢は届かぬ 問題ない
これより 押梁州(アンニャンジュ)の防御線を突破し ユシンを捕らえる!』
ユシン軍と対峙する遊軍
その赤兜の正体は ケベク将軍の影武者であった
ユシンの鎧を身にまとった林宗(イムジョン)を ユシンだと思い込み
退却しながら ユシン軍を誘い込む作戦だ
林宗(イムジョン)は すべてを承知しながら ユシンとして敵を追撃する…!
ケベク将軍本人は 同じ時 新羅(シルラ)の本陣を襲撃すべく進軍していた
夜の闇に紛れ 本陣に総攻撃をかけるケベク
しかし 本陣はもぬけの殻だった
当惑する間もなく 一斉に火矢が打ち込まれる…!!!
闇の中から躍り出たキム・ユシンが叫ぶ
『百済(ペクチェ)軍を壊滅させよーーーっ!!!』
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