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善徳女王 62話(最終話)#2 徳曼(トンマン)…

山道を歩いている毗曇(ピダム) その姿はもう 上大等(サンデドゥン)の身なりではない 髪をおろし 脇差しをつけ その後ろをサンタクがついて行く 『この先は 陛下のいる本陣です』 『だから何だ』 『ですから その… このまま行くと捕まってしまいます』 『ああ そうだろうな お前は逃げろ』 『え?私だけどこへ行けと?それに上大等(サンデドゥン)はどうするんです?』 『お前1人なら包囲網も抜けられよう』 毗曇(ピダム)は 自分の紋章をサンタクに手渡した 『できるだけ遠くへ行き すべて忘れよ そして剣を捨て 土を耕して生きるのだ』 『上大等(サンデドゥン)は どうなさるのです』 毗曇(ピダム)は これから自分が行くべき道の先を見据えた 『伝えるべきことを… 伝えていない人がいる それを伝えに行く』 『ですがそれでは…!』 『……』 『私と一緒に行きましょう 上大等(サンデドゥン)!』 最後まで忠心を見せるサンタクを 毗曇(ピダム)はやさしく見つめた 『行くんだ 早く』 その後ろ姿に サンタクは深々と拝礼をする その胸に衝撃が走ったかと思うと サンタクはウッとうなるように息を止めた どこからともなく飛んできた矢が サンタクの胸を貫いている…! 朴義(パグィ)の軍勢を確認したサンタクは 苦しい息の中から叫ぶ! 『サ…上大等(サンデドゥン)…!!! お逃げください!』 毗曇(ピダム)が振り向くと同時に サンタクの体に無数の矢が撃ちこまれた 朴義(パグィ)が 槍を突きつけ叫ぶ 『逆賊毗曇(ピダム)は降伏せよ!!!』 『私を殺した者は 歴史に名を残すだろう 来い!!!』 到底 毗曇(ピダム)を相手に勝てる者など この軍勢の中にはいなかった 善徳(ソンドク)女王のもとへ 閼川(アルチョン)が駆け込んでくる 『陛下!おっしゃったとおり本陣近くの森に 毗曇(ピダム)が現れました』 『……』 さすがに言葉を失う善徳(ソンドク)女王 キム・ユシンが聞く 『それで捕らえたのか!』 『抵抗して… 兵たちと戦っている』 朴義(パグィ)の軍勢をたった1人で倒し 毗曇(ピダム)は本陣に現れた 包囲する兵士たちをものともせず 毗曇(ピダム)は果敢に戦う ...

善徳女王 62話(最終話)#1 明活(ミョンファル)山城 制圧!

反乱軍となった貴族たちと戦おうと 多くの民が武芸道場に集結し 善徳(ソンドク)女王は 民の前で激励の訓示を述べた 額には汗が滲んでおり その体調の変化に気づいたのは 侍衛府令(シウィブリョン)閼川(アルチョン)だけだった 『陛下 私が背負います』 『民の前です… 自分で歩きます』 『…承知いたしました』 善徳(ソンドク)女王が玉座から退席した後 民の間にざわめきが起こる 誰もが夜空を見上げている 『あの星 揺れていないか?』 『本当だ!!!』 夜空にまたたく星の 最も輝きを放つ星が揺れ ついには流れ星となった…! その瞬間 善徳(ソンドク)女王は崩れるようにして倒れ込む 『陛下!』 『陛下ーーーっ!』 駆け寄る金春秋(キム・チュンチュ) キム・ソヒョン キム・ユシン!!! 苦しそうな呼吸に喘ぎながら 善徳(ソンドク)女王が… 『騒ぎ立てる必要はありません』 『輿を持て!!!』 閼川(アルチョン)が 必死に耐えている体を支える 民衆の間から叫び声が…! 『星が落ちたのは月(ウォル)城の方角だ!!!』 ※月(ウォル)城:徐羅伐(ソラボル)の都城 明活(ミョンファル)山城でも 皆が夜空を見上げ驚愕している 毗曇(ピダム)はほくそ笑み 民に向かって言い放った 『月(ウォル)城に星が落ちた!これは月(ウォル)城の敗北を意味する! 月(ウォル)城の運は尽き!月(ウォル)城に血が流れるだろう! 我々は天の味方だ!新たな神国のために!』 ※神国:新羅(シルラ)の別称 そこですかさずヨムジョンが… 『上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)公 万歳!!!』 『万歳!!!』 ※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理 一気に士気が高まり ミシルの一族と貴族たちは歓喜に満ちた奇声を上げる すでに迷いから脱した毗曇(ピダム)は 真っ直ぐに一点を見つめる (私が神国となる! そして徳曼(トンマン) お前を手に入れる!) 寝所に運ばれた善徳(ソンドク)女王 脈診した医官は 狼狽するばかり… 『へ…陛下!』 『薬を処方してまいれ』 『ですが陛下…!』 『もうよい 下がりなさい』 医官と入れ違いに キム・ユシ...

善徳女王 61話#2 崩れた信頼

『女王を廃位させます』 『え?戦線を長く維持させるはずでは?』 『兵が集まれば 都城に進軍するのですか』 『いいえ』 ミシルの一族と貴族たちは 毗曇(ピダム)の考えがまったくつかめない 『多くの貴族が我々の味方についています それに チュジン公やスウルブ公 虎才(ホジェ)公もいる 私まで含めれば 和白(ファベク)会議の大等(テドゥン) 10人中7人になります』 ※和白(ファベク)会議:新羅(シルラ)の貴族会議 『ということは…』 『そうです 私は上大等(サンデドゥン)として和白(ファベク)会議を招集します』 推火(チュファ)郡に行くべきはずの毗曇(ピダム)は 明活(ミョンファル)山城を掌握し さらには和白(ファベク)会議を招集した 『今回の議題は 女王の廃位についてです 女王徳曼(トンマン)は チヌン大帝の残した領土を守れず 高句麗(コグリョ)と百済(ペクチェ)の侵攻を許し  大耶(テヤ)城を奪われた』 ※高句麗(コグリョ):三国時代に朝鮮半島北部で栄えた国 ※百済(ペクチェ):三国時代に朝鮮半島南西部にあった国 『女性の君主として 唐の使節団に見下され 神国の品位と基盤を揺るがした また 阿育王の暗示が女王の衰運を示し 新王の到来を示唆した これは天の啓示ではないか』 ※阿育王:アショカ王 『以上の3つの理由により 上大等(サンデドゥン)毗曇(ピダム)と 和白(ファベク)会議は 女王の廃位を決議した 女王が政務から手を引き 自ら退位することが 苦しみにあえぐ神国を救う 唯一の方法である 神国和白(ファベク)会議 上大等(サンデドゥン) 毗曇(ピダム)』 至る所に貼られた掲示物の文面に 民は驚く 竹方(チュクパン)とサンタクも 民に紛れ困惑する 『廃位だなんて一体どういうことだ? 本当に毗曇(ピダム)公が首謀者か?』 『これは反乱だぞ』 『待てよ 毗曇(ピダム)は明活(ミョンファル)山城に? これを渡さなきゃ! でも明活(ミョンファル)山城は反乱軍の拠点だ』 『行ったら殺される』 『それは分かってるけど 渡さないと どうしよう…』 竹方(チュクパン)は恐怖に怯えながらも 善徳(ソンドク)女王の言葉を思い出す 「必...

善徳女王 61話#1 明活(ミョンファル)山城

苦悩し叫びだす毗曇(ピダム)の横で ヨムジョンは美生(ミセン)との密談を思い返す 「毗曇(ピダム)の信頼を崩す?」 「そうです」 「毗曇(ピダム)が引っ掛かるのか?」 「陛下に関することですから」 善徳(ソンドク)女王が刺客を差し向けたと ヨムジョンは騒ぎ立てる 『陛下が殺そうとしたのか?陛下が? ウハハ… ウッハッハ… 結局はこういうことになったのか!お前が皆を裏切って命を懸けた愛は こんなもんだったのか!!!!! アーーーッハッハッハ…』 『この野郎… 殺してやる!!!』 『俺を殺すのか?殺してみろよ 俺を殺せばなかったことになるのか? 俺を殺してそれでどうするつもりだ? お前はまた捨てられたんだ  陛下に捨てられた』 剣を取り落し 地べたに座り込む毗曇(ピダム) 洞窟では 毗曇(ピダム)を連れて来るというヨムジョンを待ちくたびれ 美生(ミセン)が苛立ちの頂点に…! 『あの2人は なぜまだ来ないのだ!』 『ヨムジョンが毗曇(ピダム)公を連れて来ると?』 『私兵を集めたのに毗曇(ピダム)が来ないと始まらない』 『ヨムジョンは何を考えているんだ!』 『ヨムジョンの策略です』 『信用したのが間違っていた』 『信じなきゃよかった』 『やられましたね』 残忍さが消え 絶望で座り込む毗曇(ピダム)にヨムジョンが… 『今からでもいい 徳曼(トンマン)を手に入れたいなら神国を奪え! 準備は整っている お前はもともと王になりたかったんだろ え?』 放心状態で立ち上がり フラフラと歩き出す毗曇(ピダム) 『どうした?どこへ行くんだ? 毗曇(ピダム)…』 毗曇(ピダム)が受けた 衝撃も知らず 善徳(ソンドク)女王は 推火(チュファ)郡の毗曇(ピダム)に宛て手紙を書く “今回のことは 私が徐羅伐(ソラボル)で 王として対処する最後の仕事となるだろう これを終えたら…譲位する 王位を譲って 推火(チュファ)郡に行くつもりだ 小さな寺が建てられる場所を用意して待っていなさい 短い時間でも お前と一緒に過ごしたい” ※徐羅伐(ソラボル):新羅(シルラ)の首都 現在の慶州(キョンジュ) (本当に俺を 殺そうとしたのだろうか) 「私に恋心...

善徳女王 60話#2 政変の兆し

「本当に陛下がお前と 心が通じ合っていると思うか」 耳に残る春秋(チュンチュ)の言葉を 毗曇(ピダム)は必死に振り払う 善徳(ソンドク)女王に会うために… 司量部(サリャンブ)では ヨムジョンと全員が対立していた 『そうとも!お前1人の仕業であり 我々は無関係だ』 『そうとも!我々は部外者だ』 『そうでしたね ええ 確かに私が1人でやりました では結構!!!!! 陛下と春秋(チュンチュ)公に明かしなさい 唐の使臣と密約を結んだが 殺害未遂は無関係 “西国呼世尊 神国呼帝尊” 阿育王の船も捏造したが 春秋(チュンチュ)公は襲っていない 反乱を起こし陛下の廃位を画策したが 矢を放ったのはヨムジョンだと!!! そう言ったらどうです?』 ヨムジョンに凄まれ 反論できる者は1人もいない 『陛下は 春秋(チュンチュ)公の負傷が偶然の事故だとご存じのはず では なぜ殺害未遂として調査を命じたか… 決心されたからです 我々の粛清を』 ヨムジョンを責め立てていた夏宗(ハジョン)が 困ったように… 『では どうすれば?』 『調査で証拠が見つかる前に 先手を打ちます』 『先手を打つだと?!つまり政変を起こす気か!』 『その場合にも備えてきたでしょう 何か問題でも?』 『しかし政変はさすがに…』 『毗曇(ピダム)は?どうする? 政変なら名分が必要だが 姉上と真智(チンジ)王の息子である 毗曇(ピダム)以外に名分がない 毗曇(ピダム)の心を どう動かす?』 『それは この私が責任を持ってやります』 現れた毗曇(ピダム)に 善徳(ソンドク)女王は… 『お前が無関係なのは知っている』 『陛下』 『ただ お前は失敗した 勢力の掌握に』 『そうです もはやお手上げです 綿密な調査で真相を究明し 国法に従い厳罰を』 『それではお前にも被害が及ぶ!責任は免れないはずだ』 『構いません そうなさるべきです陛下 覚悟はできております』 『でも私は! …覚悟ができていない』 『陛下…』 善徳(ソンドク)女王の手の中に 指輪が… 『私たちは 同じ物を持っていなかったわね』 『なぜ このようなことを… まるでお別れのようです』 『推火(チュファ)郡の山...

善徳女王 60話#1 天意の一助

『極楽浄土の仏の名を持つ者が 神国の王になると?!!!』 『極楽浄土の仏?』 ※神国:新羅(シルラ)の別称 (曇(ダム)か? 毗曇(ピダム)が… 即位する?) 便殿会議が終わり ヨンチュン公は… キム・ソヒョン 林宗(イムジョン) 朴義(パグィ) 徳充(トクチュン)と会談する 『“西国呼世尊”が指す人物は 毗曇(ピダム)しかいない』 『仏教において“西国”とは 西方極楽浄土を意味する』 『西方極楽浄土の世尊とは“仏”』 『“曇(ダム)”は西国では仏の俗名の一部』 『阿毘達磨の別称は毘曇(ピダム)』 『“西国呼世尊”つまり毗曇(ピダム)が “神国呼帝尊” 神国の皇帝になるとの文言です』 『そんな…』 この事実は またたくまに民の間にも広まった 『船に積まれていた文書では “上大等(サンデドゥン)の毗曇(ピダム)が王になる” と』 ※上大等(サンデドゥン):新羅(シルラ)の最高官職 現在の国務総理 『チヌン大帝の時も阿育王の船というのは吉事の兆しだったそうよ』 『ありえない 陛下がいらっしゃるのに毗曇(ピダム)公が王に?』 ※阿育王:アショカ王 『唐の使臣が言ったらしい “陛下は女性だから新羅(シルラ)は何度も侵略されるのだ” と』 『言葉に気をつけろ!死にたいのか?』 ※新羅(シルラ):朝鮮半島南東部から発展し 後に三国を統一 金春秋(キム・チュンチュ)は兵を招集した 『陛下と王室への冒涜であり 神国を根本から揺るがす罪悪だ! 必ず犯人を捕らえ 国法で厳しく処罰する!分かったか!!!』 『はい!』 『隊大監(テデガム)雪地(ソルチ)は 船府(ソンブ)とともに調査を! 隊大監(テデガム)高島(コド)は 絲浦(サポ)流域で船を出した者を捕らえろ』 ※船府(ソンブ):船舶業務を担当する部署 ※隊大監(テデガム):軍営の武官職 『直ちに屈阿火(クラファ)県へ向かう!』 『はい!』 善徳(ソンドク)女王のもとへ キム・ユシンが… 茫然と徐羅伐(ソラボル)を眺めている善徳(ソンドク)女王 その隣には 閼川(アルチョン)がじっと見守っている 『春秋(チュンチュ)公が 軍を率いて屈阿火(クラファ)県へ』 『ええ 私が許可しました こ...

善徳女王 59話#2 極楽浄土の仏

善徳(ソンドク)女王の没後 金春秋(キム・チュンチュ)が即位すれば… うろたえる夏宗(ハジョン)に貴族を代表してスウルブ公とチュジン公が… 『我々も似たような立場です』 『春秋(チュンチュ)公の即位で ユシン公 ソヒョン公 ヨンチュン公 この3人が勢力を握る』 『ええ 彼らが実権を握ることになります』 『また春秋(チュンチュ)公は 智證(チジュン)王からの 三韓一統の大業を受け継ぐ』 『つまり戦は続き 王建はより強化される その一方で 我々貴族の勢力は衰えるでしょう』 『どうすれば?』 悩み始める一同に ヨムジョンが… 『問題は どうやって毗曇(ピダム)公を確実につなぎとめるかです』 『こうなった以上 他に手はない』 『そのとおりです これからは我々も命懸けでやるしかない』 『兵部(ピョンブ)に帰属した私兵に対し 時が来たら集結できるよう 連絡網を構築します』 『我々も 準備をしておきましょう』 『新しく集めた傭兵はどうです?』 『ご心配なく 極秘に事を進めております』 そこへ ヨムジョンの部下が知らせに飛び込んでくる 『毗曇(ピダム)公が 司量部(サリャンブ)の武将10人を集め 極秘に文書を 10人の地方官に渡せと!』 『何だと?』 ※司量部(サリャンブ):王室のすべての部署を監察する部署 『内容は?』 『“近日中 徐羅伐(ソラボル)に顔を出せ” とだけ』 『徐羅伐(ソラボル)に?』 『はい』 ※徐羅伐(ソラボル):新羅(シルラ)の首都 現在の慶州(キョンジュ) 『分かった 渡して来い 彼らがいつ頃来るか調べろ』 『はい!』 『もしや毗曇(ピダム)は何か企んでいるのでは?』 『とにかく我々は計画通りに行動を 美生(ミセン)公も準備中の件を進めてください』 『ええ 分かりました』 毗曇(ピダム)のもとへ 再びサンタクが… 『3人の武将は地方へ向かいました 7人はヨムジョン公の商団に』 『ヨムジョンの手下が7人も?3人の名は?』 『ハンスにチョンタク カンソです』 『今後はその3人だけを動かす』 『はい 上大等(サンデドゥン)! ところで実は…』 『何だ』 『ヨムジョン公が 鉱山の労働者を募集してい...